【歌,い,手】音ノ葉

#27 bygone days ページ28

Aside


私は家にも居場所が無かった。


血は繋がっているはずなのに。私には興味ナシ。親は弟にしか興味が無かった。


殴られたりして皺が付いた制服や、痣が出来ている肌にも何も言わない。私はのけ者だから。


ご飯だって、月の小遣いを上手くやりくりして食べないといけない。家で出されるご飯に、私の分なんてない。


でも、今日はそれ以上に気になることがあった。


浦田渉のこと。


忠告したのに、虐められる雰囲気なのに、何食わぬ顔で私に話しかけてきた。


今まで出会ったことの無いタイプの浦田くんに、正直困惑していた。


明日、どんな顔をすればいいんだろう‥‥。


最初から、幼稚園の時から居場所がない私には、対人関係なんて築けもしなかった。


いや、できないんだ。


‥‥でも、誰かの事でこんなに悩んだのって、初めてかも。


そう思うと、少し心が軽くなったような、逆に重くなったような、変な気分になった。


浦田くんが挨拶してきたら、返すくらいはしてみようかな‥‥。


──────
────
──


｢あ、おはよ｣


私が教室に入ると、みんなの視線がばっ！とこちらを向くのと同時に、浦田くんが挨拶してくれた。


｢お、はよ‥‥｣


何故か私の口からは、ぎこちない挨拶しか出てこなかった。忠告はすらすら言えたのに‥‥ていうか普通逆！！


｢あ、霧崎さん教科書見せてくれない？｣

｢‥‥何で？｣

｢まだ教科書持ってないから‥‥｣

｢あ、うん｣


あれ、意外とスラスラ喋れる。


普通に喋っている私を見て、クラスメイトががやがやし始めた。


｢ていうか虐められるよ〜とか言っといてめっちゃ喋るじゃん｣


虐められるよ〜を真似たつもりなんだろうけど、全然似てなかった。


そんな声真似に、私もクラスメイトもクスリと笑う。


‥‥その中に、この光景を気に食わなそうに見ているいじめの主犯3人がいた。


そんなことに私達は気付かず、どんどん話を進める。


｢あ、俺のこと渉でいいから｣

｢私もAでいいから｣

｢よろしく｣

｢よろ｣


そう言って笑った瞬間、私達に冷たい何かがかかった。


｢つ、めた‥‥！｣


突然のことに何が起こったのか分からず、ただぱちばちと瞬きをすることしか出来なかった。


渉も濡れたようで、髪から水がぽたぽたと滴り落ちていた。


｢っははは！｣


‥‥あいつだ。


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