134話:息をするかのように ページ43
医務室の前まで来ると、ちょうどみんなとシナ先生が中から出てきた。
「あっ、Aさん帰ってきた」
藤内くんが私に気づき、その言葉でみんなも、なぜか微妙な表情で私を見る。
シナ先生は目尻を下げてこちらを見たが、その視線には気づかないフリをした。
「ごっめーん。
蛇さんが見えたからそれ追いかけてたら、結構遅くなっちった」
そうおどけてみせる。
作兵衛くんはその様子にぷう、と頰を膨らませ、まるで子供に説教するように言った。
「まったくもう。
俺たち授業があるので帰りますが、まだ安静にしててくださいよ。
いくら良くなったとはいえ、また倒れられたら困ります」
「あれまあ、心配してくれるのね。
私ったら愛されてるなあ」
おふざけ半分で言ってみる。
そうすればてっきり顔を赤らめるなりするのかと思ったのだが、案外真剣な表情を向けられたものだからびっくりした。
「…本当に、心配してるんですよ。
あの時俺たちがとれだけ焦ったか、わかるでしょう」
それは、孫兵くんの件を言っているのだろう。
「うん、ごめん。
ちょっと軽率すぎたね。
これからは気をつけるよ」
…言い訳の内容を、だけど。
「あれ?数馬くんも帰るの?」
みんなと一緒に出てきた数馬くんに驚いてそう言えば、数馬くんはこくりと頷いた。
「ちょうど新野先生が帰ってこられたので、僕は午後から授業に参加するんです。
新野先生は今職員室に行くと言って出ていったので、そのうち来ますよ」
「ほー、それは良かった。
数馬くんの授業が遅れると困るからねえ。
迷惑かけてごめんね、ありがとう。
じゃあみんな、頑張ってねー」
私は数馬くん達に手を振り、曲がり角で見えなくなったところで医務室に入った。
「まーごへーいくんっ
遅くなってごめんよー」
微塵も反省の色は見せず、孫兵くんに駆け寄る。
孫兵くんはなぜか微妙な表情になり、苦笑いを返してくれた。
とりあえずぼふりと布団の上に寝転がり、そのまま隣の孫兵くんの布団にごろごろ突進した。
「どすこーい」
「なんですか」
「孫兵くんの私に対する態度が変でしたので」
「別に変じゃないです」
「ほーんとー?」
「本当です」
「どーせ男子同士で変な会話してたんじゃないですかー?」
「してません」
しばらくじろじろと孫兵くんの様子を見ていたが、嘘をついた感じはない。
あくまで冷静に蛇の本を読んでいる。
私はああ面白くない、とため息をつき、自身の布団に戻った。
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河鳴(プロフ) - さくらんぼぱいさん» 前作からありがとうございます!ギャグとかほざいてたクセにシリアスたっぷりですが、よろしくしてやってください! (2015年6月15日 19時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼぱい(プロフ) - すごいおもしろいですー。笑更新がんばってください。応援しています (2015年6月15日 18時) (レス) id: eb5c2b9479 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» 今までノーマルだった夢主ちゃんはショタへの目覚めに戸惑うこともあるでしょうが、生温かい目で見守ってくれたら幸いです!応援ありがとうございます! (2015年6月14日 22時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪夏海(プロフ) - 河鳴さん» wwwショタ夢主って大好きですw面白いから【真顔…更新応援してます!! (2015年6月14日 22時) (レス) id: ffcea8df34 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» コンセプトは「とにかくショタ」です( *`ω´)前作が久々知オチでしたので、今回はとにかくショタです。上級生もギリギリショタとか知らない。ショタが許されるのは小学生までです。これからも夢主ちゃんのショタコンへの変貌っぷりに乞うご期待です! (2015年6月14日 0時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:河鳴 | 作成日時:2015年6月3日 19時