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121話:動悸と息切れ ページ28

酷い頭痛に目を覚ました。

外を見ればまだ日が昇ったばかりで、小鳥のさえずりしか聞こえない。

「………………着替えるか」

もう面倒くさいしここで着替えよ。

ぼんやりとする頭で起き上がり、隣で寝る孫兵くんを一瞥して着物をとる。

昨日教えてもらった着付け方を思い出し、なんとか着替えを済ました。

しかし相当時間を食っていた様で、最後に紐を結ぶ頃には外から人の声が聞こえている。


孫兵くんが起きる前にご飯を……

そう思いふすまを開けると、背後の布団がもぞりと動いた。


「………ん、A…さん……?」

「ああごめん、起こしちゃった?」

ガンガンと殴られるような痛みの頭を押さえ、平気な顔で微笑む。

孫兵くんは上体を起こして眠そうに目をこすり、大丈夫ですと言った。


「……どこか、行くんですか」

ぼそりと呟く孫兵くんは、何処か寂しそうな顔をしている。

「え?ああ、ご飯を取りに行くだけだから……」

心配しなくても、と言うが、沈んだ表情は変わる気配がない。


まったく、しょうがないな。

私はふらつく足で孫兵くんに近寄り、その端正な顔を優しく撫ぜた。

「ほら、すぐ帰ってくるからそんな顔しないで。
もし誰か来たらノックする様に言ってるし、怖くなったらお布団潜ってるといいよ。
私が帰ってくるまでの我慢」

泣きそうな目で私を見てくる孫兵くんの頭をよしよしと撫でる。

孫兵くんはしばらく何も言わなかったが、やがて笑顔で頷いた。


「よし、良い子だね。
じゃあ本当、すぐ帰ってくるから…」

そう言って立ち上がると、その瞬間がくりと膝が折れた。

「Aさん?」

「あっああいや、大丈夫。
少し疲れが溜まってたのかな、何もない所でつまずくなんて」

慌てて立ち上がり、袴をぱんぱんと払う。

…つまずくとか、絶対違うってバレてるわ。

明らかに様子がおかしい私を心配し、孫兵くんの声のトーンが低くなる。

「でも、よく見れば顔色悪いし…」

「…本当になんでもないから。
じゃあ行ってくるね」

目尻を下げて私を見る孫兵くんに無理やり笑い、息切れを抑えながら医務室を出た。

122話:駄目っぽい→←120話:オフトゥン



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河鳴(プロフ) - さくらんぼぱいさん» 前作からありがとうございます!ギャグとかほざいてたクセにシリアスたっぷりですが、よろしくしてやってください! (2015年6月15日 19時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼぱい(プロフ) - すごいおもしろいですー。笑更新がんばってください。応援しています (2015年6月15日 18時) (レス) id: eb5c2b9479 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» 今までノーマルだった夢主ちゃんはショタへの目覚めに戸惑うこともあるでしょうが、生温かい目で見守ってくれたら幸いです!応援ありがとうございます! (2015年6月14日 22時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪夏海(プロフ) - 河鳴さん» wwwショタ夢主って大好きですw面白いから【真顔…更新応援してます!! (2015年6月14日 22時) (レス) id: ffcea8df34 (このIDを非表示/違反報告)
河鳴(プロフ) - 吹雪夏海さん» コンセプトは「とにかくショタ」です( *`ω´)前作が久々知オチでしたので、今回はとにかくショタです。上級生もギリギリショタとか知らない。ショタが許されるのは小学生までです。これからも夢主ちゃんのショタコンへの変貌っぷりに乞うご期待です! (2015年6月14日 0時) (レス) id: 26f58208c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:河鳴 | 作成日時:2015年6月3日 19時

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