157.予兆 ページ30
まふまふside
リハーサル終わりの夜。
普段はほとんど人が来ない僕の部屋。その部屋に、ノックが響いた。
ま「？はい、どうぞー」
そう言うと、失礼しますと言って入ってきたのは意外な人。
ま「え、月弥ちゃん？どうして···」
『あは、聞きたい事がありまして』
そう笑い、彼女は僕の隣に座った。その手に持っていたのは、彼女が愛用してるノートパソコン。
ま「···Mixについて？」
なんか投稿するの？と聞くとあたりです、と返ってきた。
『いつもならまふ君に任せちゃう所なんだけど、今回は自分の手で全部やりたくて。でもあまりに不慣れで、聞かないとやり方分かんなくてw』
そう困ったように苦笑いする月弥。
『どうしたいかは全部自分で分かるんだけど』
お手伝い、してもらって良い？と首を傾げる彼女。
···可愛い。
それは反則でしょ、と心の中で呟いて、紅くなった頬を隠すように分かった！と返事をしてパソコンを覗きこんだ。
蜂蜜side
ま「えっと、音源と慣らすにはここを調整して良い感じにする。んで加工強めにかけたい時はここクリックすれば色々出てくるから、適当に選んでみて」
なるほど、と相槌を打ちながら操作していく。
理想は出来ていたから、あとはそれに近づけるようにしてパソコンを弄るだけ。
自分で機械音痴だと思っていたけれど、そうでもなかったみたいだ。
時々まふ君に質問しながら、なんとか仕上げた楽曲。
部屋に入ってきた時に8を指していた短針はいつのまにか10を指していた。
『まふ君、付き合ってくれてありがと。お礼にと言っちゃなんだけど、先にこれ聞く？』
そう尋ねれば、返ってきたのは微笑。
ま「今は、いいよ。これが上がった時に、一番に聞いて感想言うからさ」
そう微笑んでいる彼は、とても大人びて見えて。
『っ、分かった！夜遅くまでありがとう、お休み』
少しだけだけど、紅く染まった頬を隠すように立ち上がってまふ君の部屋からでて私の部屋に入る。
『─────っはぁ、好きだなぁ···』
その言葉と共に、零れたのは涙。
溢れる想い。でも伝えられない。苦しい。
恋が、こんなに苦いものだなんて思ってもみなかった。
彼が同じ事を思っていたなんて、今の私は知る由もないのだ。
ベットに突っ伏しても、涙は止めどなく溢れてシーツを濡らしていった
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作者名：月見だんご | 作成日時：2017年8月21日 23時
