241話 「エゴでもなんでも」 ページ48
口を開きかけて閉じた銃兎さん。
その様子に彼を睨むのをやめて柊さんの手を取った。
『柊さん、マナちゃんのとこ行きましょ。無事ですって言わなきゃ』
「……はい」
暗い顔で俯いている柊さんの手を引いて外に出ると、俺たちに気づいたマナちゃんが駆け寄ってくる。
「二人とも大丈夫!?」
『マナちゃん。無事か?』
「こちらは大丈夫です」
「こっちも全員大丈夫そう。何人かは安心して泣き出しちゃって警察さんのお世話になってる」
『そっか……ま、無茶しすぎたよな。作戦立案者が悪いわ。謝っとこ』
「いいんじゃない?見たところ責任は顔面で取ったみたいだし」
『責任の取り方ヤクザすぎワロタ』
ゲラゲラとマナちゃんと笑う。気を使わせているのは分かるけど、もう笑っとくしかない。
正直言えば、能力で治せるのだ。だからこそ柊さんを庇ったってのもある。
そりゃ熱かったし痛かったけどさ。それでも。
『あ、柊さん。ご祝儀!』
「ご祝儀?」
『柊さん、結婚するから』
「ちょ、Aさん」
「マジ!?絶対呼んでよ!ドレス姿見たい!」
『それは見たい!……え、まってマナちゃん。今、俺たち滅茶苦茶図々しくね?』
「…うわお」
「さては……お料理目当てですね?」
『「バレたか」』
今度は三人揃って大声で笑った。
きっと柊さんは今日の事を後悔し続けるかもしれない。でも、俺だってこうしなかったら後悔し続けることになっただろう。だから、これは俺のエゴなのだ。
それに………。
『美人のドレス姿を見れれば、我が生涯に一片の悔いはないよね』
「絶対ラオウに謝った方がいい」
べしっとマナちゃんにツッコミを入れられて、また笑った。
高い金属音が響く。左馬刻がジッポでも開けたのだろう。案の定煙草の香りが漂ってくる。
「ダッセェな銃兎」
「……そうですね」
鼻で笑いながらそう言う左馬刻に肯定しか返せない。
自分が言っていたことは間違いではないだろう。だが、その間違いではないことが彼女の逆鱗に触れた。
いや、どう考えても俺が言っていたことは不味い。結婚を控えてる女性に言っていい言葉ではない。
柊が結婚するというのは小耳に挟んでいた。挟んでいたがそれどころではなかった。彼女の頬。なぜ彼女が、どうして……そればかりが先行し、結果はこのザマだ。
「ま、俺様も変わんねえわ」
火のついた煙草を持ったまま歩く左馬刻。気絶している一人の男の顎を掴み口を無理やり開けさせ、男の舌に煙草を押し付けた。
断末魔が響く。
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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