215話 「近隣への配慮」 ページ22
「おいうさポリ公、邪魔するぜ」
「……深夜一時だが?」
「知るかよンなこと」
ズカズカと家の中に上がり込んできた左馬刻にため息しか出ない。いや、文句の二つや三つでも怒鳴り散らかしてやりたいところだが、先ほども述べたように現在時刻は深夜一時。近隣住民は悪くねえ。俺も悪くねえ。だからぐっと堪えた。キレたら負け、キレたら負けだ入間銃兎。
「で、なんの嫌がらせだ?」
ソファにどっかりと座って煙草に火をつけるハマの王様。眉間に皺が寄っているが機嫌が悪いというわけではなさそうだ。どちらかと言えば疲れている。また何か舎弟がヘマでもしたのかと言葉を待っていれば「あー……」と低く唸った。
「きっかけがねえ」
「あ?……主語をつけろ、主語を。俺はエスパーじゃねえ」
「……Aと会うきっかけがねえ」
「は?」
煙草を咥えて何を神妙に言いやがるかと思えばこれだ。俺の疑問符の後に流れる沈黙が、左馬刻の言っていることが冗談でもなんでもなく今回の訪問の要件であるという事を物語っている。いや、どうしろっていうんだ。
何を言うでもなく固まっていれば机の上に置いていた俺のスマホの通知音。画面が点灯して送られてきたメッセージとその送り主の名前が浮かび上がる。
ばっちり左馬刻からも見える位置にあったせいで奴の眉間にマリアナ海溝と称しても可笑しくないほどの溝が刻まれた。本当にタイミング完璧ですねあなた。
「きっかけがねえなら会わなきゃいいだろ」
「……チッ」
てっきり文句を言われるだろうと思ったが舌打ちだけで終わった。よほど困っているらしい。まあ、ここで俺に八つ当たりで怒鳴ろうもんなら部屋から叩きだしていたが。
「普通に呼び出して謝ればいいだろ」
「普通に呼び出すってどうすんだよ。逃げられても困んだろ」
「俺が知るかよ」
「じゃあ俺様も知らねえよ」
「………もう帰れ」
「……」
無視か。
仕事疲れ以外の頭痛に頭を押さえていればまた通知音が鳴った。
俺がスマホを見れない状況だろうと思ったらしく、【いつ貰いに行けばいいですか?明日とか早い方がいいです?】との文面。
「明日会うのか」
「ああ、恐らくな。渡すものがある」
「………俺様が渡して来てやんよ」
「はぁ?………あー、もう分かったから帰れ」
ファイルに入れていた封筒を左馬刻に投げ渡す。いまだに渋い顔をした左馬刻には癪だが仕方ない。せめてもの意気地返しに、いま彼女がどういう勘違いをしているかは言わないでやった。ざまあみろ。
216話 「たぴおかたぴおか」→←214話 「急に聞かれても困る質問」
208人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ