195話 「夜のお友達」 ページ2
にしてもこの無言は辛い。とりあえず適当に話を振った方がいいのだろうか。まったくもって不本意ではあるが、こちらは迎えに来てもらった身。運転の暇つぶしくらいはしないといけないのではないか………。クソ、わっかんねー。正直、誰かと車でどっかお出かけなんてこっちに来るまでは学校のバス旅行ぐらいだ。そのころも大体は誰かと喋るなんてことは勿論なく、ずっと黙って旅程をこなしていた。
………話題がない。中華街のこと?え、でも地雷踏むかもだよね。だって俺のこと一郎に重ねてたんでしょ?じゃあ俺が絡まない事……あ。
『彼女さん、めちゃめちゃ美人ですね』
「あ?」
『ほら、中華街で』
「………そんなんじゃねえわ」
『え?……でも、んん?』
あの雰囲気はそういう雰囲気だった。大人のそれ。
俺の上司であり同僚のバカヤロウが口癖の人はよくターゲットを口説いて殺してみたり、情報を引き出してみたりしていた。で、そういうことはこの世界では恋人同士でやるものであろう。あれ?
いや、確かに同僚は仕事で女を口説いて連れ込んでたけど。
『………え、まさかアレですか?夜のお友達』
「普通に言えばいいだろ」
『あはは、濁したい気分なんです………彼女じゃないんですか、そうですか』
「嬉しいかァ?」
ニヤリと笑みを向けられたが、ちょっとよく意味が分からない。曖昧な苦笑いをもう一度向けながら、中華街で見た女の人を思い浮かべた。
そうか、あんな綺麗で可愛くて自分の女の部分を磨いている人間でもそういう感じなのか。……つくづく、なんかこう。
一瞬、脳裏をよぎった黒い影。大きくて、恐ろしい。欲深い影。
歳を重ねるにつれ、理解した。自分に向けられていた命以外の危険。ぞわりと背筋に冷たいものが走っていく。
「ま、コイビトとかはいねーな」
『つくらないんですか?』
「………まぁな。お前は?」
『俺……ですか?』
恋人……恋人ねえ。
前の世界でそういうきっかけになるような言葉を言われ続けた。冗談まがいだったり、セクハラすれすれだったり。
でも上手いところ躱して流して笑い飛ばして……本気だろうとそうじゃなかろうとすべてのフラグをへし折ってきた。
『暫くはいらないですかね』
「はぁ?」
『……実際、自分の事で手いっぱいで今はそんな余裕もないですし。そういう左馬刻さんはなんでつくらないんです?』
「あー……死なねえやつなら傍に置いてやらんこともない」
『え……急に舎弟の話ですか?』
196話 「護れる限度」→←194話 「この時間のチーズケーキ」
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レイ(プロフ) - 夢主ちゃんの反応がホントに面白いです。ちょくちょく入ってくる他作品ネタもニヤニヤしながら見ています( ̄▽ ̄)いつまでも待っているので自分のペースで頑張ってください!応援しています。 (2019年6月3日 18時) (レス) id: 9314b0693c (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - 寝不足ハープさん» ありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです☆彡これからもよろしくお願いします。 (2019年5月27日 17時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
寝不足ハープ(プロフ) - 続編おめでとうございます!毎回楽しく見させてもらってます。更新頑張ってください! (2019年5月27日 2時) (レス) id: 69f8faa1c1 (このIDを非表示/違反報告)
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