【ヒプマイ】どこの世界でも俺が最強だと思ったら大間違いだクソボケ！！【4章】

153話　「幻の日常」 ページ9

温かい布団の中にいる。ぬくぬくとした布団の中。
朝になったらお母さんが起こしに来て、私より先に起こされる颯馬のぐずる声が聞こえてくるのだ。味噌汁の匂いがして、お母さんの「颯馬、いい加減に起きなさい。お姉ちゃんも起きてるわよ」って少し怒った声が響くころには着替えも終わっている。
階段を降りて行けば玄関で靴を履いているお父さんがいて、優しい顔して「おはよう」って言ってくれるのだ。私が「おはよう、いってらっしゃい」って言うあたりで颯馬の「まだ眠いー」ってごねる声が聞こえるのだ。
ああ、いつも通り。いつも通りの朝……平和な朝。









目を覚ませばベッドの上。静かな部屋だった。隣では銃兎さんが寝息を立てながら眠っている。味噌汁の匂いも、母さんの声も、弟の気配も、父さんの姿も……何もない。
ただ、名前のない関係でギリギリ繋がっている人間が隣で眠っている。

『…………ははっ』

思ったよりも乾いた笑い声が出た。
これが今の俺だよ。ごめんな、本当に。









起きれば俺の隣に彼女の姿がなかった。
キッチンから物音がするから、きっと朝食を作っているに違いない。一つ伸びをしてから体を起こし、メガネをかける。

「おはようございます」
『おはようです！』

寝室を出て声を掛ければ、お玉片手に振り返った彼女。
もうご飯できるんで顔でも洗ってきてくださいと告げる声は常通りだが、どこか違和感がある。
首を傾げつつも顔を洗って戻ってくれば朝食の準備が済んでいた。

『俺も一緒に食べていいですか？』
「ええ、勿論」

水の入った二つのグラスを持った彼女が笑う。
こちらも笑顔で返せばテーブルについて手を合わせている。
白米を口に運びかけて思い出したように彼女が俺を見た。

『あ、今日の昼で理鶯のとこに戻りますね』
「え」
『六日間お世話になりました』

一旦箸を置いて頭を下げた彼女。
当然の事を言われているだけなのだが、何か突っかかりを感じ眉間に皺を寄せる。

「わかりました。また何かあったらいつでもどうぞ」
『ありがとうございます。なるべく迷惑かけないように気を付けますね』
「………ゲームも折角出したので。私の労力、無駄にしないでくださいよ」

恩着せがましく言えば困ったように笑われた。







銃兎さんが出勤した後、部屋の掃除をしてキッチンも片付けて……ついでに残ってた食材で保存の効くおかずを数品つくりタッパーに入れておいた。

『さて、出るか』

銀を肩に乗せ、バッグを持った。

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