【ヒプマイ】どこの世界でも俺が最強だと思ったら大間違いだクソボケ！！【4章】

166話　「気に入った！……気に入った？」 ページ22

勿論、俺なんかでいいならと条件は飲んだ。
乱数の着せ替え人形になる未来は見えたが……まあ女子力と引き換えと考えればね。欲しいとは思わないが、あって損はない。というか乱数の言う鈍感は少し改善したいし。

「あっ、忘れるところだった。僕からの質問ね！」
『そうだったな。なんでもいいぜ』
「……勘解由小路無花果って知ってるでしょ？」
『ッッ！！？』
「ビンゴ〜……あっ、大丈夫だよ。チクったりとかそういう事はぜぇったいにしないから」
『チクる……ってことはやっぱり探されてんのか』
「うん。でも本気で探してはいないみたい。無花果おねーさんには、もしコンタクトが取れれば逐一報告しろって言われてる」
『乱数、お前』
「だが、全部思い通りになると思ったら大間違いだ」

うお、またドーベルマン出た。クツクツと低い音で笑っている乱数に少し引いていればまた常の笑顔に戻った。すげえな、コイツ。

「だからぁ、Aの事はナーイショ！気に入っちゃったしね」
『………なんかさ』
「ん？」

乱数なら聞ける気がした。
そして、答えてくれる気がした。

『気に入ったって……なに？』
「……どういうこと？」

本気の質問だと察してくれたらしく、促すように聞き返す。
高いはずの乱数の声が、なぜか無性に心を落ち着かせた。あと二口ほど残っている皿の上のパンケーキに視線を逃がして言葉を続ける。

『理鶯も銃兎さんも左馬刻さんも……揃って気に入ったっていうんだよ』
「ふぅん」
『なんで俺にそんな出来んのかって聞いたら、気に入ったからって……意味わかんないじゃん』

歌龍Aとしての長所は「強さ」のみだ。突出しているとかでもなく、のみ。
そう思って生きてきた。強いからこそほかの短所をカバーして、強いからこそ存在が許される。強いからこそ、人との繋がりを得ることができる。あの世界は強さがすべてだったから。
だが、生まれた世界ではどうだった？人殺しと呼ばれ、磨いてきた強さは弾きもの、繋がろうとした糸は俺の過去を、人生を知られた瞬間断ち切られる……そんな世界だった。
今俺がいるこの世界は………そんな世界だ。
法で護られ、マナーがあって、人道がある……それも世間一般が決めたカタチが。
それから一度でも逸れれば戻っては来られない。例えそれが陥れられた事だったとしても、望んでいなかったことだとしても。
だからこそ、俺はこの世界では「無価値」だ。
この世界で俺は「弱者」であり「持たざる者」なのだから。

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