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31話 「大丈夫、大丈夫」 ページ33

混乱して大泣きして慰めてもらって手当てしてもらって……本当に頭が上がらない。

『助けてくれたのも……ありがとうございます』
「どちらかと言えば貴殿が巻き込まれた側だ。毎日大変だったな」
『………え?』

少しロード時間が必要だった。
毎日?毎日って言いましたこの人。

『き、気づいてたんですか?』
「ああ。だが小官の為に気づかれないようにしているのだろうと思って言わなかった」

結果的にこうなるのならば言えばよかったな、と苦い顔をする毒島さん。
なんだ、じゃあ俺の今までの苦労はなんだったのか。バレバレだったなら隠しているの逆に恥ずかしいじゃないか。

「辛い思いをさせたな」
『いえ……俺が勝手にへまやっただけですし………それにしてもヒプノシスマイクは凄いですね。思い出しただけで恐ろしいですよ』

思い出してカタカタと小さく震えだした体を自分の両腕で抱く。怖い大人とか、強いやつとか、死にそうになるとか……そういうのとはまた違う、どう抗っても勝てない。今日でよくわかった。俺はアレへの耐性がゴミだ。限りなくクズだ。

『すみません……俺、出て行きますね。あてもできましたし、これ以上毒島さんの足引っ張ったり迷惑かけたりはできないですし……お邪魔しました。すみません』

力が入らない足で無理やり立ち上がろうとすると肩を押さえつけられた。そのまま右手首を引かれ、床に押し倒される。完全に毒島さんにマウントを取られた形だ。

「その体でどうするつもりだ」
『………なにするんですか』
「恐らくだが、さっきの連中の仲間には小官ごと貴殿も目をつけられている」
『どうにかします』
「ならばどうにかしてみるといい」

懐からヒプノシスマイクを出し、起動するスイッチに指をかけた毒島さん。体がぴしりと固まり、自然に上がる脈拍。震えだす身体。
その様子を見た毒島さんはため息を一つ溢すと、横にマイクを置いて、そのまま床の上を滑らせた。

「小官の撒いた種だ、責任は取ろう」
『え?』

俺を引っ引っ張ると、胡坐で座っている自分の足の上に座らせた。そしてそのまま抱きしめられる。ぶわっと再び涙があふれた。毒島さんの背中に両手を回せば、優しく頭を撫でられる。恐怖、動揺、焦燥、寂しさ、痛み、うれしさ、安堵……いろんなものがごちゃごちゃになる。

『ぶす、じまさ……』
「理鶯でいい」
『りおー……さ』
「ああ。A、大丈夫だ」

大丈夫、と繰り返す理鶯さんに何度も頷いた。

32話 「カッコいい、可愛い」→←30話 「手負い」



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カルラ - ゴファッ!! なんだこれは、、、、、 めっちゃいい! (2019年5月22日 16時) (レス) id: 92a66c530f (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - たぬきなたぬたぬさん» ありがとう……ございます……(´;ω;`)これからもよろしくお願いします! (2019年3月2日 13時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
たぬきなたぬたぬ - ほんとに.....なにこれ......すき.......。 (2019年2月26日 21時) (レス) id: 83afc62697 (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - だまこさん» 理鶯推しがここにwありがとうございますw (2019年2月18日 18時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
だまこ(プロフ) - 理鶯が1番好きなんじゃあ (2019年2月18日 17時) (レス) id: 3c83364c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年1月6日 21時

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