9話 「ヒプノシスマイク……?」 ページ11
「無花果様から、まずはこれを確実に渡せと」
『……ナニコレ?』
「ヒプノシスマイクです」
無花果さんの部下から貰ってすぐはわけがわからない贈り物だったが、説明を聞いた今ならわかる。この時代、腕力よりも弾丸よりも強いものは「声」ないし「言葉」。
俺が渡されたのは、カラオケなので使うようなマイク。真っ黒の名にも変哲のない「ああ、マイク……ですね」的なそれだ。しかも小さい。ポケットに収まっているし、なんならポケットに少し余裕がある。
そんな経緯のこれ。そして巷では違法マイクなるものが横行しており……まあ、この辺りは詳しく説明がなかったので違法マイクなるものが何なのか分からない。パチモンってことぐらいしか字面ではわかんないし。
「じゃ、巻き上げに行こうぜ」
「ああ。目立つなよ」
「目立つもクソも、コレの威力の前じゃどんな奴でもすぐに地面と仲良しだろうぜ」
「ハッ、ドグソ共のクソラップがなんだって?」
嘲笑を隠しもしない言葉の直後にキュイイインといった音、男たちの騒めきが路地裏に響く。だが騒ぎの元凶は俺の位置からは見えない。気にはなるが下手に動かないほうがいいな、息を殺した瞬間に、頭に鈍痛が走った。
「テメェらクソ雑魚がイキがってんじゃねえぞ!!」
頭痛、めまい、吐き気。
グルグルと視界が回り、地面に縫い付けられたように体が弛緩する。自分の口から濁点交じりの嗚咽が馬鹿みたいに漏れ出ている。気持ち悪い、頭痛い、苦しい。
『がはっ……ぐうっ……ふぐっ……うお゛ぇっ……』
ほぼ野生の勘だ。これ以上聞くと不味い。何がとかではなく、死ぬ。
気力だけで頭を持ち上げ、壁伝いに上半身を持ち上げ、そして。
『……ぐっ!!』
全力で頭をコンクリートの壁に打ち付けた。
そして意識が戻ってきた時には自分の周囲は闇に包まれていた。時計を見れば午後七時。壁に打ち付けただけの痛みではない頭痛、そして脳みそが揺れる感覚と吐き気に襲われながらも立ち上がる。
幸い誰にも見つからなかったようで、恐らく倒れた時のまま目を覚ますことに成功した。
銀、と呼べば木刀の状態からウサギの姿に戻った銀が心配そうに見上げてきた。
『大丈夫……ではねえけど。場所移動しねえとな』
「キュウ」
ここの治安はどうやら最悪だ。
そして俺がグロッキーになっている原因は例の「ヒプノシスマイク」という代物だろう。
『とり、あえず……人がいなさそうなところに』
足を引きずりながら歩き始めた。
10話 「ぶらんぶらんと揺られて揺れて」→←8話 「シャレオツな街に来たぜ」
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カルラ - ゴファッ!! なんだこれは、、、、、 めっちゃいい! (2019年5月22日 16時) (レス) id: 92a66c530f (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - たぬきなたぬたぬさん» ありがとう……ございます……(´;ω;`)これからもよろしくお願いします! (2019年3月2日 13時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
たぬきなたぬたぬ - ほんとに.....なにこれ......すき.......。 (2019年2月26日 21時) (レス) id: 83afc62697 (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - だまこさん» 理鶯推しがここにwありがとうございますw (2019年2月18日 18時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
だまこ(プロフ) - 理鶯が1番好きなんじゃあ (2019年2月18日 17時) (レス) id: 3c83364c40 (このIDを非表示/違反報告)
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