0話 「海賊の世界で何を思う」 ページ1
「Aちゃんってさ」
『ん?』
「強いよね」
『まあ……弱くはないな』
「いや、最強レベルでしょ」
何時ものサボり魔が珍しくサボってねえなあなんて思っていれば、書類に目を落としたままそんなことを言ってくる。
海軍本部、青雉殿の部屋にて……窓の外は清々しいほど青空が広がっていて、悠々とカモメが飛んで行った。
『なんでまた急にンな事を』
はいっと手渡された書類を受け取りつつ疑問を投げかける。
よしよし、しっかりサイン入ってる。
「んー、なんとなく?ほら、Aちゃんがグロッキーになってるとことか見たことないから」
『そりゃぁ……ンなもんになってたら、場合によっては死んじゃうからな』
昔はなっていた。それこそこの世界に来る前。戦い方も碌に知らない……拳の振るい方も、蹴りの防ぎ方も知らないような時期だ。弱くて、小さくて、それでも自分を守るために、自分の大事なものを守るために……血反吐を吐き捨てて、奥歯をかみしめて強くなった。
『……この世界に来て、いっそよかったのかもな』
「ん?なんか言った?」
『いや!……なんでもねえ』
心の中だけにとどめておいた言葉は小さく零れてしまっていたらしい。幸い聞こえてはいなかったが。
力が全て。弱ければ搾取され、自分の正義を……大事なものを守るには力が必要なこの世界。この海……俺は、この世界に来て実のところは救われたのかもな。
ふっ、と自嘲気味に笑った。その瞬間。
『うぐっ…!』
視界が揺れた。そして落ちて行く感覚。
足元にぽっかりと穴が開き、そのまま落下している。
―――呼び寄せ給へ、呼び寄せ給へ
しゃがれた声が聞こえる。
そんなことを思いながら意識が薄れて行った。
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カルラ - ゴファッ!! なんだこれは、、、、、 めっちゃいい! (2019年5月22日 16時) (レス) id: 92a66c530f (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - たぬきなたぬたぬさん» ありがとう……ございます……(´;ω;`)これからもよろしくお願いします! (2019年3月2日 13時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
たぬきなたぬたぬ - ほんとに.....なにこれ......すき.......。 (2019年2月26日 21時) (レス) id: 83afc62697 (このIDを非表示/違反報告)
作戦隊長(プロフ) - だまこさん» 理鶯推しがここにwありがとうございますw (2019年2月18日 18時) (レス) id: 9eca42e73b (このIDを非表示/違反報告)
だまこ(プロフ) - 理鶯が1番好きなんじゃあ (2019年2月18日 17時) (レス) id: 3c83364c40 (このIDを非表示/違反報告)
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