名前で呼んで (一郎) ページ1
〜 一郎視点 〜
ーーこれが一目惚れってやつかと思った。
正直、二郎と三郎が成人するまで、俺は恋なんてしないと思っていた。
だが、Aさんを見た瞬間、時が止まった。
依頼は時々来る、親から勧められた見合いを断るために、恋人のフリをしてほしい、というものだった。
俺はすぐに依頼を受け、流れを相談した。
大抵こういう依頼は20代後半から30代の人たちが多いから、いつもは年齢を偽るけど、Aさんは俺と3つしか変わらなかった。
そんな若いのにもう結婚を勧められるなんて早いっすね、そう言うと、Aさんは少し困ったように笑った。
親の前でボロが出ないよう、なるべく顔を合わせる。
あまり男性に免疫がないのか、Aさんはすぐに顔を赤くした。
その表情は俺の心を揺さぶるには十分すぎる。
Aさんと一緒にいるたびに、どんどん好きは加速する。
一度、Aさんに親の前でもないのにここまでする必要はないのでは、と言われたが、ボロが出ないように、と言って押し切った。
当然、他の依頼者の時はここまでしない。
俺は恋人のフリで終わるつもりなんて無かった。
ーー依頼は、何事もなく成功に終わった。
Aさんは安心したように俺にお礼をいった。
ここで終わってたまるか。
依頼を終えた今も、俺はAさんを見かけては声をかける。
Aさんも笑顔で答えてくれるから、悪くは思われてはいないはず。
だがーーーー
「あ、Aさん! ちわっす」
『あ、山田くん、こんにちは』
最近、一つ悩みがある。
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作者名:カオル | 作成日時:2021年10月28日 9時