【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 7

佰参拾捌頁─見舞イノ策略─ ページ3

「ハァイ、安吾！元気かい？｣




静かな病室に抑える気のない明るい声が響いた。

とても見舞いをしにきた者とは思えないそれに、包帯やギプスを付けてベッドの上で絶対安静を強いられている人物────坂口安吾は顔を顰める。

声の主は太宰であり、手には見舞い用の果物籠を持っていた。




『騒がしくてすみません』




おじゃまします、と太宰の後ろからAが顔を出す。

こちらも手には見舞い用の花束を持っており、よく見るとラッピング用紙の端には“fleur”と流暢な筆記体が書かれていた。




「素敵な格好だねぇ。今日は善い話を持ってきたよ｣

『組合の車攻撃で負ったその怪我を武装探偵社で治療しようという話になりまして。探偵社の専属医さんの治癒能力なら直ぐにでも仕事に復帰出来ます』




見舞いの品を小さなテーブルに置いて彼等は安吾に探偵社の方針を伝える。

誰が聞いても美味しい話なのだが、そういうものには大抵裏があるものだ。

それもこの二人からの話。

過去の任務で彼等のことを多少なりとも知っている安吾は当然ながら眉を寄せた。




「...で、その見返りは？｣

「見返り？真逆！特務課と探偵社はいつだって相互に助け合って来たじゃあないか｣

「成る程...“だから今回の戦争を特務課も手伝え”と？｣




雲一つかかっていない顔で当然という風に話す太宰に、安吾は眼鏡を掛け直して溜め息混じりに返す。




『そう聞こえたのでしたらそうかも知れませんね。実は...』




中々進まない話にAは取り敢えずと見返りとも云える要求内容を安吾に話す。

内容は、“軍警に捕まっている一人の探偵社員を組合との最終決戦の前に助けたい”というものだった。

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