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佰陸拾頁─花ト犬 2─ ページ25

「いや、彼女も未だ試験を受けていない。あの人には探偵社の試験では不十分だ、と社長が判断したからだ」

「...そう。でも、Aさんなら...私にはきっとその試験は......」




呟くように小さく返す。

その場の空気には酷く重く暗いものが充満していた。


彼女の頭に浮かぶのはまだ新しい先日の光景。

自分が暗殺者だとバレてしまった時には警官を仕込み刀で傷つけ、探偵社から任された仕事の時でさえ、思わず資料を渡す相手にテーザー銃を撃ってしまった。

“そんな自分には無理だろう”という思いが彼女はどうしても頭の片隅から追い出すことが出来なかった。




「気に入らないな」




鏡花がハッと目を開く。

それは今まで彼から、否、誰からも聞いたことが無いほどに冷たいものであり、彼女は雪の中に放り出されたかのように錯覚した。




「“元殺し屋に善人になる資格はない”...君は本気でそう思っているのか?」




鏡花は何も云わない。

だがその沈黙が何よりも肯定だという事を示していた。




「鏡花ちゃん。人には、向き不向きがある。そして君には、明らかな殺しの才能がある。だがら君は探偵社員にはなれない。君はそう思っている」

「...」

「全く莫迦々々しい」




太宰は呆れたといった面持ちで椅子の背もたれに体重をかける。

それは少し大袈裟に云っているようにも聞こえた。

しかし同時にそこには多少なりとも彼の本音が含まれていることが感じ取れた。




「その考えが如何に根拠薄弱か一秒で証明してみせよう。鏡花ちゃん、君はその手で何人殺した?」

「...35人」

「たかが35人くらい何だ?」

「!」




幼い見た目の彼女の口から発せられた言葉より、それに続く太宰の言葉はそれ以上に衝撃的なものだったのだ。




「いいかい鏡花ちゃん。君は探偵社の凡てを知らない。自分自身の凡ても知らない。凡てを知ることは誰にも出来ない。それを“可能性”と云うんだ。君に契機(チャンス)をくれた敦君だって、元は災害指定猛獣だ。でも彼は今その近くの空域で命を懸けて戦ってる。街を守る為にね。君の云うAだって...」




続くことなくその言葉は不安定にそこで途切れる。

それに鏡花は少し頭を上げ、通信機の方を見て不思議に思う。


数秒間の沈黙。

暫く開けたままにしていた口。

彼はやがて悔やむように一の字にきつく閉じた。

かつて彼女と交わした、とある約束を思い出して。

▽→←佰伍拾玖頁─花ト犬─


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作品ジャンル:アニメ
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まんじゅうねこ(プロフ) - 煉華☆さん» ゲームでの名前は其の侭「まんじゅうねこ」です!ありがとうございます! (2018年11月2日 17時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - まんじゅうねこさん» 初めまして、こんにちは(*^^*) フレンドは大丈夫ですよ!「4555 8960 3456」←こちらでいけると思うので、ゲームでの名前を教えていただけると助かります。コメントありがとうございました! (2018年11月2日 17時) (レス) id: b70d4562c3 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうねこ(プロフ) - すいません、文マヨのフレンド申請を送っても良いでしょうか……。 (2018年11月2日 16時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ありがとうございます!風花楓音で申請しました! (2018年9月30日 10時) (レス) id: cdcff714b1 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - のんさん» こんにちは!大丈夫ですよ(*^^*) コメント欄にIDが書いてあるので、申請して貰えたら嬉しいです。 (2018年9月24日 14時) (レス) id: b70d4562c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:煉華 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/renka_kazetani  
作成日時:2018年7月14日 17時

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