カラダが1つ ページ12
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「お兄さん! 大丈夫かい!? お兄さん!」
「まだ息してるよこの人! もう平気だよ、頑張れあんちゃん!」
クリーチャーが暴れていたのだろうか、気絶した数人の人間と肉片、そして真っ赤な血が辺りに散らばっている。見渡す限りの地獄絵図、キツイ血の臭いに堪えながら、騒ぎを聞きつけたのか男性二人がその場に倒れている青年に声をかける。
真っ青な肌。触れれば冷たい事もすぐに分かる。しかし呼吸はしており、生きていることに希望を持った二人は青年を抱き起こした。
すると青年はいきなりすっと目を開ける。
「……なんですか…」
ボサボサの紫色の髪の毛で隠れていた瞳が、青年が迷惑そうに首を動かす事で露出する。赤に縁取られた紫色。そしてその下にある酷い隈。青年を抱き上げていた男性は、驚いた拍子に青年を放り投げた。
身長に対し遥かに軽く、不健康そのものなカラダは無抵抗に数m先へと飛んでいく。ズシャッ、と砂を転がった青年は「………控えめに言って死ね…」と呟いた。その行像はまるでゾンビだ。
「ご、ごめんな驚いてつい…!」
「…いや別に……、口の中なんかジャリジャリいってるけど」
「あんちゃん無事か。顔色悪いけど病院行くか?」
「……顔色悪いのはいつも…はぁ…あー…病院は嫌いだからいい…。あと病院連れてくならそこの人たちにして、まだ生きてるから」
青年は唸るような喋り方をし、陰気な雰囲気が滲み出た低い声で男性らに返した。青年基──洗井悩は、ふらふらと起き上がり気絶している男女を指差す。恐らく彼がそうしたのだろう、木にもたれ掛かっていた。
不意に悩はぐちゅ、と何かを踏む。今はもうその原型を成していないが、それは紛れもなくクリーチャーの肉片だった。
「お兄さん、なんでそんなピンピンしてるの? 襲われたんだろ?」
「…はぁー……、えぇ…なんでピンピンしてるのって…当たり前でしょ、だって──」
クリーチャー倒したの、おれだもん。
悩はなんでもないようにそう言ったが、辺りは血の海。男性らはそれを聞いてさっと血の気を引かせた。そして「何故そんな所で倒れてたんだ」と質問をする。悩は、一切声のトーンを変えず「寝てたから」と返した。
ずりずりとサンダルを引き摺るように歩く。駐屯地ではカナモスの仲間と言えようか、そんな魔法使い達が行き交っていた。単独者である彼がやって来るのは珍しいのだが、故に。
「ここどこだっけ…」
18歳にして迷子となったのだった。
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メイドのもも(プロフ) - 桜花で更新します (2020年5月19日 9時) (レス) id: 3d1581623e (このIDを非表示/違反報告)
梨兎(プロフ) - 更新終わりました! (2019年12月19日 4時) (レス) id: f393b65561 (このIDを非表示/違反報告)
梨兎(プロフ) - 鈴ノ枝 海景で更新します! (2019年12月19日 4時) (レス) id: f393b65561 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 更新完了です! (2019年12月19日 3時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 夜遅くにすみません!マグノリアとオーベロンの1話ずつ更新します! (2019年12月19日 2時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
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