きすまいのおひめさま ４

キンスマ~生い立ち編~ ページ15

市川A。神奈川県生まれ。
生まれてから4才までの写真は数枚しか存在しない。


両親は共に天涯孤独だったが、実に仲睦まじい夫婦だった。
結婚して2年目に妊娠。妻は喜んだが、夫は素直に喜ぶことは出来なかった。
なぜなら、妻は生まれつき体が弱く、出産することが命懸けだということが分かっていたから…
それでも妻は自分の命に変えても産むことを決意。夫はそれを止めることは出来なかった。

そして出産。生まれたAは健康体で、妻は喜んだが、やはり、出産に体が耐えられず、10日後に亡くなった…27才だった。

夫は妻に対する愛が深く、悲しみに暮れていたが、周りの励ましもあり、忘れ形見であるAを育てていく決意をする。

しかし、初めての子育て。うまくいかないことばかり。頼れる人もおらず、夫は追いつめられていった。

そして…ついに、幼いAに手をあげるようになってしまう。
「お前が生まれたからあいつは死んだんだ!!」
「お前がいなければ俺たちは幸せだったのに!!」
そう暴言を吐きながら…

少しずつ精神のバランスを崩していく夫。
かろうじて残っていた近所の人との関わりも次第に減っていき、必要最低限の外出をしなくなった。

そんな生活が続き、Aが間もなく4才になる頃、事件は起きた。
暴れた夫がAに刃物を突きつけたのだ。いつもの暴言を吐きながら。
近所の人が物音に気づいて駆け付け、Aは保護、夫は虐待の容疑で警察に連れて行かれた。

これが最後になり、二度と二人は会うことはなかった…

キンスマ~生い立ち編~2→←キンスマ

→ 目次へ｜作品を作る
他の作品を探す