304話 ページ4
｢野外で過ごすことは何回かあるからな｣
少し濁した言い方をすればそれ以上は聞いてこなかった
全員で食事し他愛のない会話をしていれば山を登ったせいか何人かが寝落ちする
するとそれが伝染するようにあっという間に全員寝た
どこでも寝やがるな
熊が出る山だから念の為火をつけておく
こっそり持参したマシュマロを炙り口に入れる
これは本当に美味しい
何時間だっただろうか
本格的に夜になってきた
俺の後ろで大きく口を開けて寝る金太郎は2歳下とは思えない
美味しそうな頬を人差し指で指す
すると包み込むように歪む頬
｢ん……｣
起きたのかと急いで手を離せば無邪気にへにゃっと金太郎が笑う
懲りずに片手で頬を優しく掴めば赤ちゃんみたいに表情筋がさらに緩くなる
可愛い
幸せな空間を楽しんでいると邪魔が入る
今日は寝れなさそうだ
分かっていた
ここは入道パパが追い出した熊がいる山だと
ヒグマがいると
だから火をつけてたんだ
まさか寄ってくるとは思っていなかったが
大丈夫、守ればいい
木に火をつけ当たりを照らす
幸い俺の背後に全員寝ている
正面にだけ山のようにいる熊たち
囲まれていないだけマシだ
クマは俺が気づいていないと思っているらしい
それなら……
アイツらの周りに火を並べ戦う時に寄ってこないようにしておく
熊も気づいたのか威嚇しながら姿を現す
殺る気満々ってか
ナイフを取り出し構える
明日は肉だな
手に持った木を火のついた方を前にしてゆっくりと熊のいる向きに回して威嚇をしておく
すると先に手を出してきたのは熊
といっても熊のボスではなく恐らく下っ端
ボスは俺を警戒しているらしい
俺は火を熊に近づけそれに怯んだ瞬間心臓にナイフを投げる
仲間の死に怯むヤツらの心臓をどんどん刺していき残りはボスだけ
殺すのは最善じゃあない
火を使わなければ俺は上に立てる
持っていた木を床に置き踏み潰して火を消す
｢やってやるよ｣
立ち上がったクマと俺のタイマン
ただ頭脳を使って隙を狙って顔を狙う
どっちだ
少しナイフがズレ振り落とすスピードが遅くなる
一か八か
当たれ
そう思っても虚しく熊に払われそうになる
あぶね、あの爪で横腹を抉られたらただじゃ済まない
何分戦っただろうか
やっと勝てた
怯んだ熊を従わすことができた
これでこれからの登山に命の危険はない
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作者名：I like choco. | 作成日時：2021年8月25日 23時
