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「鬼も、人も。閉じ込めるのは簡単だったでしょう? しかもそのズレは必ずしも生じるとは限らない。だから術にかかった奴は自分の認識にズレがあることに気づかないし気づけないまま、森を彷徨うことになる」
「…………ああ、なるほど。お前は全てが分かっているわけではないんだな」
──かかった。
鬼の言葉を聞いて、心の中でほくそ笑んだ。
「というと?」
「ズレが生じる具合は対象によって変わる。手のひらで捕まえられた時間が長い者はズレる頻度が多くなり、短い者は少なくなる。先ほどの小僧はそこそこ長かった。ズレもよく生じていただろう?」
…………なるほど。だから先輩の認識のズレはあったりなかったり……どちらかというと多かったのか。私が頸を落とした鬼は……もしかしたら先輩より捕まった時間が長かったのかもしれない。
……十二時の方向。
「へえ、なるほど。まさかそんな具体的に教えてくれるとは思わなかった」
「お前一人ならば大して脅威ではない。女は弱いからなぁ。非力で、脆い。捕まえてしまえばすぐに喰える」
「…………」
「もう一人の男……あいつはどうした? 守ってもらっていたのではなかったのか?」
「守ってもらう? 私が? 先輩に? 馬鹿なこと言わないでくだせぇな。あの先輩は私なんかを守る玉じゃねーよ。別行動ってやつ。この森にいる鬼はあんただけじゃないからね。他の鬼をお任せしましたとも」
「……ほう」
「意味、わかる? つまり……」
首をこてりと傾げ、刀の切っ先を真っ直ぐに向けたまま嘲る様に口角を吊り上げる。
「──あんた一体ぐらい、私一人でどうとでもなるってこと」
鬼の眉根が不愉快そうに寄った。視線の中に苛立ちが含まれる。上手くいった。
「…………ああ、嗚呼。何と生意気。その細腕で、この俺がどうにでもなる、と。面白い、面白いなぁ」
…………あ、やっばい。
「……お前は、ただでは殺さない。四肢を千切り、腹を裂いて、目玉を抉り出し、最大の苦痛でもって、殺してやる。泣いて縋り、命乞いでもするがいい。女の叫び声は煩いが、それでもどうして、なかなかにクるものがある」
「…………わぁ、変態だぁ……」
視線の中に殺意、愉悦、恍惚が混じった。これはちょっと、上手く行き過ぎた。
うおおおマジかマジかマジかあああああ……!!
「俺を嘲ったこと、苦痛に悶え喘ぎながら後悔するがいい」
どうしよう……めちゃくちゃ怖い…………。
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ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» おっとそのパターンは予測してなかったですね……? 美味しく味付けして食べてくださいね……。おやすみなさい!たまごさんさん(?)も風邪など引かれないようお気をつけて!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - ではおやすみなさい、体調崩されないようお気をつけください! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - くそぅ…間に合わなかったか…Rainさんもっと語彙力落としてください(失礼)それかユズヒさんを食べます! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» コメントありがとうございます! 因みにRainさんの語彙力は私が美味しく頂いたのでカケラも残っておりません。大変美味しゅうございました……(カップラーメンを眺めながら) (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» いくら言葉があれでも声がよければ全て良しとなる…ここはそんな世界……。とんでもないです! 明日を楽しみにしててくださいね……!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月8日 16時