* ページ32
視界が揺れた。というより、これは落ちる感覚だ。目の前の女の顔がだんだん上に行って、胸、腹、尻、足、最後に履物と見える世界が変わっていった。ごとん、と重たい音と、どしゃっと何かが崩れ落ちる音。驚きに目を見開いた鬼は、理解ができていなかった。
なんだ、これは。どうなっている、何が起きている。どうして自分の視線は、こんなに低く……体が動かない。体? 俺の体は、からだ、は……。
そこでやっと、鬼は自分の体と頭が斬り離されたことを理解した。
「こんなにあっさり引っかかるとはな」
「こちらとしては助かりますよ。早く終わった方が楽ですからねぇ」
聞こえてきたのは男の声。必死に視線を向けるも、頭の向きのせいでその姿を捉えることはできそうにない。
何が起こった、どうして男がここにいる。その答えが聞こえたのは、本当にすぐだった。
「私と先輩が二手に分かれりゃ、そりゃあ私の方に来ますよね。だって女の方が非力で狩り易いでしょうし? それを利用しない手はないでしょ? 二手に分かれた後に、ある程度距離を歩いて先輩が私達を追いかける。追いついた所でそのままザシュッ。頸を落とすって算段でした。っていうか思ったより先輩遅かったですね? 迷いました?」
「そんなわけねぇだろうが。来がけに一体鬼がいたから狩ってきただけだ」
「え、なにそれめちゃくちゃかっこいいですね? 遅れたせいで私が負傷したらどうしてたおつもりで?」
「お前が負傷してようがしてなかろうが俺には関係ねえ」
「うわー……」
────嵌められた。
ざらざらと体が崩れていく。ここに居られなくなっていく。理解してももう遅く、今更焦ってもどうにもならない。
死を自覚して、受け入れる余裕もないままに。能天気な人間二人の会話を聞きながら、鬼は崩れ落ちていった。
939人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» おっとそのパターンは予測してなかったですね……? 美味しく味付けして食べてくださいね……。おやすみなさい!たまごさんさん(?)も風邪など引かれないようお気をつけて!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - ではおやすみなさい、体調崩されないようお気をつけください! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - くそぅ…間に合わなかったか…Rainさんもっと語彙力落としてください(失礼)それかユズヒさんを食べます! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» コメントありがとうございます! 因みにRainさんの語彙力は私が美味しく頂いたのでカケラも残っておりません。大変美味しゅうございました……(カップラーメンを眺めながら) (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» いくら言葉があれでも声がよければ全て良しとなる…ここはそんな世界……。とんでもないです! 明日を楽しみにしててくださいね……!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月8日 16時