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「…………え?」
口から滑り落ちた音は、誰にも拾われることはない。
ぽたぽたと薬湯が髪と頰を伝って床に水溜りを作る。辺りに広がる薬湯独特の匂いが鼻をツンと突いた。きょとりとした瞳がぱちりと一つ瞬きをして、やっと現実に戻ってきた私はそれはもう思いっきり、それしかできない様に慌てて口を開いた。
「ごごごごごごめんカナヲちゃん!! 大丈夫!?」
「…………?」
「っああああごめん! ごめんね!? あお、アオイちゃん! 手ぬぐい〜!」
「え、あ、はい。というより、落ち着いてくださいAさん」
あわあわと慌てて“持っていた空の湯呑み”を机に置いた。彼女が持った湯呑みに蓋をしたもう一方の手を離してごめんねごめんねとびしょ濡れになったカナヲちゃんに謝る。
しまった思いっきりぶっかけてしまった……!
罪悪感がふつふつと心を煮詰めていく。だから嫌だったんだアオイちゃんの後って。可愛い子に二度も薬湯かける私の気持ちを考慮しろよぉ……!!
大丈夫と思ったのに……! 簡単にはいかないと思ってたから……カナヲちゃんそう簡単に薬湯かけられないと思ってたからぁ……!!
勝負は一瞬だった。アオイちゃんが出した合図の声の直後に両手を伸ばし、カナヲちゃんが手にした湯呑みを塞いでもう一方の手で掴んだ湯呑みを相手に向ける。要するに、湯呑みを塞いだ後にかけるんじゃなくて、両方を同時並行する感じ。
湯呑みを塞ぐのと相手に薬湯をかけるタイミングは一緒。いやまあ簡単且つ単純なことなんだけどね。これをいかに速くやるかってのがミソになる。
本当なら一瞬で終わると思っていなかった。いつもの万全の状態ならまだしも、今は病み上がり。体動かしてなかったんだから当然鈍っているはずで、だからこそ一瞬で終わるなんて考えていなかったから……めちゃくちゃ焦った。
早くても八手くらいはかかると思ってたのに……!
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ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» おっとそのパターンは予測してなかったですね……? 美味しく味付けして食べてくださいね……。おやすみなさい!たまごさんさん(?)も風邪など引かれないようお気をつけて!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - ではおやすみなさい、体調崩されないようお気をつけください! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - くそぅ…間に合わなかったか…Rainさんもっと語彙力落としてください(失礼)それかユズヒさんを食べます! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» コメントありがとうございます! 因みにRainさんの語彙力は私が美味しく頂いたのでカケラも残っておりません。大変美味しゅうございました……(カップラーメンを眺めながら) (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» いくら言葉があれでも声がよければ全て良しとなる…ここはそんな世界……。とんでもないです! 明日を楽しみにしててくださいね……!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月8日 16時