第66話 精神安定剤 ページ44
重たい身体を引きずる様にして、壁にもたれかかりながら廊下を歩く。目の前には木目の茶色い床。しんどくて顔も上げてらんねーわ。
やっとあのよくわかんないところから解放されて、隠の人に運ばれたのはしのぶさんの屋敷だった。蝶屋敷、と呼ばれるここは、隊士の治療を担っている場所らしい。端的に言うと病院ってところか。
本当に、本当によくわからないけれど、私が持っている神様から貰った刀をあの人達が持つのは不可能だった。柱の人達全員が試したから間違いない。
……いや、不可能はちょっと言い過ぎた。もっと正確に言うなら、“持ちたくない”ものらしかった。
なんでも、持った瞬間に身体が拒絶反応を示すのだとか。冷や汗が噴き出して身体が震える。よくわからない恐怖に襲われる。まるで、首筋に刀を当てられている様な、生殺与奪の権をこの刀に握られていると錯覚している様な状態になるという。
今まであの刀を持ってそんな感覚に襲われたことのない私は疑問を浮かべるばかりだ。だって言ってる意味わからなくない? なによ拒絶反応って。ただの刀よ? ……いやまあ、ただのではないけどさ。神様から貰った時点で“ただの”じゃないし、なんならあいつ神気込めたって言ってたし。でもそれなら私がこの刀を持てる理由ってなんなの。私人間なんだけど。どういうことなのか。
おかげさまで私を見る視線がまあしんどい……というか、なに。よくわからないものを見る視線に変わった。
……ああ、わからないか。うん、そりゃそうだな。じゃあもっとわかりやすく言うならば。
私を見る視線が、“気味の悪いものを見る視線”に変わった。
村の人達が私に向けていた視線と同じものだけれど、多分あれよりたちが悪い気がしないでもない。もっと、なんか、なんだろうな。その視線の中に殺意が混じっていた、というか。
“得体の知れないものは早く始末した方がいい”
って感じの意味が込められた、視線。
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ユズヒ(プロフ) - 神月莉乃さん» コメントありがとうございます! すみません、こっちの準備を整えてからパスワードを外そうと思い遅くなってしまいました…。もうパスワード保護は外して全体公開にしているのでぜひ読んでくださいね!! (2019年12月8日 16時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
神月莉乃(プロフ) - もしかして続編ってパスワードかけてるやつですか?出来ればパスワード外してくれると嬉しいです!身勝手なお願いをしてしまい申し訳ないです…続編を出すならパスワードなしにしてもらえると嬉しいです!更新待ってます! (2019年12月8日 16時) (レス) id: a219a83582 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» いいですよねあのシーン。私も好きです! 柱からしてみれば本当に得体の知れない存在ですからね…。人間分からないものは恐れてしまうもの…。あの二人のあのシーンを書きたいがために頑張りましたとも!! 優しい!! 世界!! (2019年12月2日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 一日に何回コメントするのこの馬鹿夜美は。でも、生殺与奪の権って言葉が出てきて、あー!ってなりました。そのシーン好きなんです。柱から恐れられる(?)って相当だなぁ。そしてやっと帰ったぞ蝶屋敷ぃ!優しい人が多いねえ。紋逸と権八郎はナイス! (2019年12月1日 23時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - jolinさん» コメントありがとうございます!! ハマってくれて嬉しいです!これからもよろしくお願いしますー!! (2019年12月1日 20時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年10月22日 21時