【鬼滅の刃】神様の巫女 陸

＊ ページ41

「A」


周りからどういうことだと言わんばかりの視線が向けられ、ついにはお館様からどういうことだい？ と意味を込めた声色で呼ばれた。
どういうことかと言われても困ったもので、私にもさっぱりだ。


「大方、さっきの神だなんだの話が嘘だったんだろォ？」

「実弥。先ほども言ったけど、あまり下の子を虐めない様にね」


そう言って傷だらけの……実弥さん？ を諌めたお館様は、口元に柔らかな笑みをたたえたまま私を見ている。答えをどうぞ、ってことかな。
ちらりと刀の方を見れば、なにやら次は別の男の人が抜こうとしている様だ。ほらあの声が大きい人。


「君なら抜けるのかな」

「え」


言われてパッとお館様を見た。その言葉で周りが一瞬で静まり返ってなんだかよくわかんない寒気がする。統一感やっば。もうこうなるとホラーだわ。


「しのぶ。彼女の縄を解いてやってくれるかな」

「はい」


しのぶさん、とは。声の方を振り向けば美人な女性。私に治ると言ってくれた女の人。いるのは知ってたけどなるほどしのぶさん。
顔も綺麗なら名前も綺麗ですねなんなんですかね。因みに声も綺麗でした。すごい。世が世ならモデルさんか女優さんですね。ナレーターでも可。だって声いいもん。

なんてぽやぽや考えていたら、しゅるしゅると縄を解かれてあっと言う間に自由に動く身に。っつっても左腕は相変わらず感覚なくて動かないから、支えを無くしたせいでぶらりとぶら下がったけれども。右腕もなんか重たいし。毒回ったなぁ。
…………あとさっきからずっと我慢してたけど足痛い。砂利が。痛い。


ありがとうございます、とお礼を言うと、しのぶさんからにこやかな笑顔が返ってきた。はぅわお美しい。最高。ありがとうプライスレス。
重たい身体をなんとか立ち上がらせると、丁度いいタイミングで目の前に刀が差し出された。
正確には柄だけど。
横を見てみると、そこには義勇さんがこちらを見つめたまま刀の鞘を持っていて。持っててやるから抜けってことだろうなこれ。

右斜め後ろにはしのぶさん、左隣には義勇さん。周りからの視線は警戒と疑心塗れ。
とてもじゃないけど刀抜くだけのイベントとは思えない。すごい。怖い。
ってうか未だに信じられないんだけど、刀が抜けないってなに。どう考えても私より力がある人が抜けないってなんだ。この刀、抜くのにコツとかあったっけ。


なんて思いつつも右手で黒い柄を握って、失礼します、の言葉と共にゆっくり引き抜いた。

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