第56話 流水星 ページ45
ギィン!
「っ!!」
斬撃を三回、やろうとした。けれど響いた金属音は一つ。女の子には傷一つなく、私も女の子の横を通過してその先に着地、っていう工程ができていない。女の子の目の前で、糸に刀を止められて止まっている。
「さっきから馬鹿の一つ覚えみたいに……あたしってそんなに弱く見えるのかしら。ねえ、そう簡単に斬らせると思った?」
女の子の目が怪しく光る。ぎゅる、と聞いたことのある嫌な音。視線を走らせた直後に身体にかかる圧迫感。胸の下の位置、鳩尾ぐらいのところで左腕を巻き込んで淡いオレンジの糸がぐるぐると巻きついている。
「わっ!?」
ぎゅん、とまた身体にかかる圧。めちゃくちゃ強い力で後ろに引っ張られてる。このままいけばきっと私は木に背中から激突すると頭が弾き出した瞬間、スゥウウウウ、と息を吸った。
一瞬で後ろの糸を斬るには呼吸を使わなきゃ多分無理。でも後ろ側に攻撃する型なんて無い。
であればどうするべきか。答えは簡単。
無いのならその場で作ってしまえばいいじゃない!!
刀を自分の正面に振って、刃は斜め下に少しだけ向ける。
「“
そんでそのまま後ろに勢いよく振れば……!!
「“壱ノ型・改
シャキン、と細く鋭い音の後に身体にかかる圧が消えた。がくんと身体が落ちて、慣性に逆らわず後ろへ。後ろに引かれる余韻を残したまま地面へと落下。そのまま身体を曲げて衝撃を和らげ、靴底を擦りながらも上手いこと着地。
身体に巻きついた糸を解いていく。
土壇場だけど上手くいった!! 単なる三日月の背面版だけど上手くいった! ! 顔には出さない様にしてるけど心臓バクバクだぜ!!
「貴方、本当に強いのねぇ。すごいすごい。でも焦りは禁物よ。じっくり楽しまなくちゃ」
「…………」
にこにこと笑う女の子の周りでシュルシュル音がして淡いオレンジがちらつく。細くて頑丈な糸。いやもう最悪ですねこれ。飛んで火に入る夏の虫の気持ちがわかってしまう。地獄。
「でも気持ちは分かるわよ。だって累が他の子に会っていたら、きっとその子はただじゃ済まないもの。死ぬ、なんて簡単に想像できることね。けれど、貴方も自分のことを心配するべきよ」
「…………」
「貴方、強いけど怖がりなのね。さっきも今も震えてばかり。鬼と戦うのが怖いのかしら? 鬼狩りに向いてないんじゃない?」
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ユズヒ(プロフ) - nogiruka03161さん» コメントありがとうございます! 絶世の美少女とはなんと嬉しいお言葉。夢主が聞いたらドヤ顔で調子に乗りますね。その認識で大丈夫です!それ故に言葉遣いや所々の残念さが目立つというか際立つというか玉に瑕……みたいな感じです! (2019年10月7日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
nogiruka03161(プロフ) - 前から思っていたのですが、夢主の美少女レベルはどれくらいなんでしょうか。主要人物は、禰豆子ちゃん、胡蝶姉妹、カナヲ、蜜璃ちゃん、鬼側なら堕姫と、美少女や美人が多いですよね。善逸の過去の発言や鬼に容姿で目をつけられるあたり絶世の美少女と認識してます。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: 5ed8b171b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!個人的に善逸との絡みは私も書くの好きなのでそう言って頂けるととても嬉しいです!鴉は焼き鳥になりました。 (2019年10月5日 19時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 巫女ちゃんと善逸の絡み好き。善逸と残ってあげるの今まで見たことないからおぉこれいいなって思った、デス。(ちょっと鴉風)あと善逸の優しさと巫女ちゃんの赤面好きそれをからかう鴉も (2019年10月5日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!手紙だとあいつは大体おちょくってくる奴です。そうなんですよ!絶対可愛いなと私も書きながら思いまして!!絶対!!可愛い!!! (2019年9月22日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年9月16日 16時