【鬼滅の刃】神様の巫女 伍

＊ ページ43

「ここにいる鬼はね、皆家族なの。家族ごっこを強いられてるのよ。累って分かる？ 白い、あたしそっくりの男の子。あの子がね、この家族ごっこを始めた張本人。おもしろいのよあの子。“家族”なんてものに執着して、鬼を受け入れて自分の血を飲ませて家族に仕立て上げるの。見た目も自分に似せる様に命じて、ちゃんと役割を果たす様にってね？ 命じる時点で家族なんてものとはかけ離れてるっていうのに、あの子それが分かってないのよ。うふふふ。おもしろいでしょう？」

「…………」

「本当は鬼が群れるのはあまりよくないんだけれど、あの子は特別。だってあの方のお気に入りなんだもの。不思議よね。どうしてあんな子があの方のお気に入りなのかしら。よく分からないわね」

「あの方っていうのは、鬼舞辻のこと？」


その名を告げれば、彼女はまたパッと笑顔を浮かべて「さあどうかしら」とはぐらかされた。なるほど。肯定すれば死ぬかもしれないもんね。でも実質上のイエスでは？ 呪い発動してないから大丈夫ってことなんだろうか。


「累はあの方の特別なの。お気に入り。どうしてか分かる？」

「……強いから？」

「んっふふ。そうね。でも惜しいわ。その答えをもう少し明確にするならば」


そっとその白くて幼い人差し指が唇に触れる。


「あの子が、十二鬼月の一人だからよ」


バクン。心臓が大きく跳ねて、ドクドクと脈打った。今なんて言った？ 十二鬼月？ あの男の子が？ あの小さな男の子が、十二鬼月？


「その中でもあの子はお気に入りなの。だから鬼が群れることを許されてる。だからこそ他の家族はその恩恵に預かれる。うふふふふ、なんて素敵で滑稽で、馬鹿馬鹿しいと思わない？」


くすくす、くすくす。本当に楽しそうに笑う女の子の笑顔はあどけない。袖で口元を隠して笑う様は上品でもあるけれど、それにしたって言葉が合わなすぎだろう。
十二鬼月がいる。ここに、強い鬼がいる。

それ、今バラバラでいるの最大級にまずいってことじゃん。

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