第54話 可愛い愚かな女の子 ページ35
あたしの親は最低な人間だった。
父は酒を飲んではあたし達に暴力を振るい、母はただ部屋の隅で身体を震わせて泣くだけで助けてなんてくれやしない。
暴力の雨がやっと終わった頃にあたし達を抱きしめて、ごめんね、ごめんねと謝る様なそんな人。
全てが終わった後で謝って、許されようとする愚かな人。
感情の波を暴力という形で外に出す父親。
あたし達を助けようともしない、我が身可愛い母親。
誰も助けてくれない。誰も愛してくれない。誰も手なんて差し伸べてはくれない。
だからきっと、きっと。
この子を守れるのは、姉であるあたしだけなのだ。
「っだああああ見つかんねぇえええ! どっこ行きやがったあの野郎〜〜!!」
あの男の子を追いかけ夜の山道を駆け回ること……どれくらいだろう。三十分くらい……?
追いかけてくる蜘蛛はなんとか振り切ったものの、目的の影すら掴めない現状に焦りと苛立ちが募っていた。
それらしい気配も視線も何もない。その場で足を止めて、ぜぇはあと息を整える。大きく吸って、吐いて。呼吸の常中をしてるとはいえ息が切れるものは切れるんだけど、それでもやっぱり鍛えてるだけあって呼吸はすぐに整った。
ふぅ、と辺りを見回して、落ち着いた頭で状況を把握。
未だに皆と合流はできていないどころか他の隊員を見かけてすらいない。鬼は恐らく複数。強さは不明。でもあの男の子は確実に強い。私が今まで戦ってきたどの鬼よりも強いはずだ。そんな視線だった。
日が昇るまでにはまだまだ時間がある。できることなら誰かと合流したいけど……私より弱いとちょっと厄介だな。守りながらの戦いにまだ私は慣れてなさすぎる。雑魚鬼ならまだしもここにいる鬼相手に私より弱い人を守りながらはハードモードってやつだろう。
「善逸とかなら放っておくんだけどなぁ」
あいつは寝てしまえば強いのだから放っとけばいい。勝手にぷっつん行って寝てしまえば自分の身くらい守ることは余裕だろうし、なんだかんだで……っていうかいやほんとあいつはちゃめちゃに強いからなんとかなるなる。
……まあそんな善逸が、今私の隣にはいないわけだけれども。
「……さて、と」
かちゃり。刀の鞘に手をかけた。斜め右側を向いたのは、そこから視線が向いているからだ。
「さっさと出てくれば? いつまで隠れてるつもり?」
「あら……気づいてたの? 貴方の独り言、もう少し聞いていたかったのに」
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ユズヒ(プロフ) - nogiruka03161さん» コメントありがとうございます! 絶世の美少女とはなんと嬉しいお言葉。夢主が聞いたらドヤ顔で調子に乗りますね。その認識で大丈夫です!それ故に言葉遣いや所々の残念さが目立つというか際立つというか玉に瑕……みたいな感じです! (2019年10月7日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
nogiruka03161(プロフ) - 前から思っていたのですが、夢主の美少女レベルはどれくらいなんでしょうか。主要人物は、禰豆子ちゃん、胡蝶姉妹、カナヲ、蜜璃ちゃん、鬼側なら堕姫と、美少女や美人が多いですよね。善逸の過去の発言や鬼に容姿で目をつけられるあたり絶世の美少女と認識してます。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: 5ed8b171b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!個人的に善逸との絡みは私も書くの好きなのでそう言って頂けるととても嬉しいです!鴉は焼き鳥になりました。 (2019年10月5日 19時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 巫女ちゃんと善逸の絡み好き。善逸と残ってあげるの今まで見たことないからおぉこれいいなって思った、デス。(ちょっと鴉風)あと善逸の優しさと巫女ちゃんの赤面好きそれをからかう鴉も (2019年10月5日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!手紙だとあいつは大体おちょくってくる奴です。そうなんですよ!絶対可愛いなと私も書きながら思いまして!!絶対!!可愛い!!! (2019年9月22日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年9月16日 16時