【鬼滅の刃】神様の巫女 伍

＊ ページ29

「…………は？」

「何、まだいたの」


逆光でよく見えない。顔に影がかかってその表情が分かり辛いけど、こっちに向けてくる視線は、まるでゴミを見る様な……というかなんだろう、煩わしい石ころか虫を見る様な視線だ。
殺気は無い。あるのは無関心。完全な無関心、ってわけではないけど、限りなくそれに近い。今まで鬼に向けられたどの視線よりも強い圧。刀の鞘に手をかけた。
なに、こいつ。


「あんた、なに……」

「僕達家族の静かな暮らしを邪魔するな」


見下ろされた視線は冷たくて、声色も冷たかった。家族、って言った。何を言っているのだろうこいつは。鬼だよね？ え、間違っていないよね？ いやうん鬼だよねこいつ、鬼鬼。視線がそうだもん。
鬼って群れないんじゃないの？ そう聞いたよ？ 珠世さんがそう言ってたよ？ ……あれ、炭治郎だったかな？ ちょっと覚えてないや記憶力なさすぎて泣きたいね？？


「お前なんて、すぐに死んじゃうよ。あいつらと違って一人ぼっちのお前なんて、すぐに殺される」

「あいつら……？ ってもしかして、炭治郎達のこと……？」


ってことは、こいつは私に出くわす前に一度炭治郎達に会ってるってこと？ 待って、炭治郎達は無事なの？ こいつがここにいるってことは、こいつとは戦ってない？ それとも戦った後？ もしかして炭治郎と伊之助は、もう殺されて──。


「あいつらは母さんが殺す。お前は…………どうだろうね」


よかった死んじゃいないっぽい！ でも物騒な言葉が聞こえました！ 母さんが殺すんですって！ 家族ぐるみで怖いですね！！


「ああ、でも。お前はあいつが好きそうな見た目をしてるから、きっとあいつが殺しにくるよ。っていうか、殺されるといいね」

「あいつって誰。っていうかあんたなんなの？ 家族って何。鬼は群れないんじゃないの？」

「うるさい。誰もお前に喋っていいなんて言ってないだろ」

「なんて勝手な……」

＊→←第52話 白い蜘蛛

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す