【鬼滅の刃】神様の巫女 弐

＊ ページ22

鬼達が全員影の中に沈む。
辺りに鬼の気配が漂って、視線だってこっちに向かっているけど私の頭はぐるぐると色んなものが巡っている。

最愛の人が、喰われた？ 生きていると信じたくて、信じていた人が喰われていた？
分かってる。帰ってきてないってことはそういうことだって分かってるけど、頭で理解したフリをするのと現実を突きつけられるのとでは全く意味が違う。


どれだけ怖かっただろうか。大事な人達ともう会うことはできないと分かった瞬間、彼女はどれほど怖くて、悲しくて、絶望したんだろう。どれだけの痛みの中で死んでいったのだろう。
なんてことない平凡で平和な日常にいきなり終止符を打たれたのは、さぞ辛かったし理不尽に思ったはずだ。

それをあの鬼はいとも容易く、笑いながら「喰った」と言った。嘲笑うように、簪を見せつけてきた。


柄を強く握りこむ。ふつふつと沸き上がる感情はそのままに、意識を集中する。
あの鬼はここで斬ろう。敵討ち、なんてそんなお綺麗なものじゃない、単なる憂さ晴らし。その為だけに、あの鬼を殺す。

感じた視線は右側から。
素早くそっちに意識を向けて、飛び出し伸ばしてきた鬼の腕を避け叩っ斬る。炭治郎の方にも鬼が行ったようで、彼も私同様鬼の腕を斬り落としていた。
もう一刀、と刀を振るおうとするも鬼が影の中に潜って後を追えなくなった。


また視線。今度は背後。


「っ！」


バク転の要領で後ろに跳んで避け、壁に足を踏み込ませてそこから地面から生える剥き出しの鬼の身体目掛けて一直線に突っ込み刀を振るう。
参ノ型 彗星の簡易版だけれど、短距離の為威力はなかなかのもの。


「がっ……！」

「ちぃ……！！」


斬ったと同時に舌打ちと低い体勢での着地。視線を鬼から外さないようにして刀を握り直す。

鬼の身体を真っ二つに斬ったけどまたどぷりと影に潜って身を隠された。声をあげていたからそれなりのダメージはあるだろうが、頸を落とせない。しかも回復もされる。
あいつらもわりかし速くって、反応できたと同時に回避行動と攻撃をしなくちゃいけないのは骨が折れる。
これがもし、影に身を隠すとかがなければまだ簡単に倒せただろうけど、現実はそうもいかないわけで。

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