【鬼滅の刃】神様の巫女 弐

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私がそう言った直後だった。ヂャポン、と鬼がその影の中に潜ってしまったのだ。鬼が潜った影は用済みと言わんばかりに小さくなって消えてしまう。
視認できなくなった。地面に隠れられた。

追いついてきた和巳さんが青い顔をして「あいつは……」と呟いて。


「和巳さん。この人を抱えて、側に立っていてください。俺達の間合いの内側なら、守れます」


そう言われた和巳さんは女性を受け取って抱きかかえる。
炭治郎は辺りを見回しながら刀を構えていた。そんな彼と和巳さんの中間辺りにいる私は、さっきから眉を寄せている。

だって、おかしい。こんなのおかしいって。


「炭治郎」

「A、あいつは地面や壁なら、多分どこからでも出て来られる。何もない空中からでも、出てくる可能性がある」


炭治郎が私に言葉を投げてくれる。
分かってる、分かってるって。でも炭治郎は嗅ぎ分けられるんだよね？ だってそうやって探したんだもんね？
でも違う、違うんだよ。何回も言うけど、こんなのおかしい。


なんで“視線が増えて”んの？


さっきの鬼は一体だったのに、なにがどうなって視線が増えてるの？ 鬼は一体じゃない？
しかもこの視線、明らかに私じゃなくて炭治郎に向いてんだって。だから私も正確な位置が分からない。

言おうとしたら、炭治郎は匂いがする方へと神経を集中していた。
背中で語るってやつだね。……タイミング逃した最悪。

何かを嗅ぎ取ったらしい彼は即座に反対側へと方向転換。
私の隣も和巳さんの隣もすり抜けて、刀を構えてその場に踏み込んだ。

刹那。


「炭治郎っ！」


影は三方向から三つ、生えてきた腕は六。
炭治郎を取り囲むように現れた鬼は、計三体。
加勢しに行くべき────足元から視線。


「っ！」


反射的に跳躍して下を見ると、そこには炭治郎の方同様に影から腕が生えていた。
二本。同じ影から生えてるってことは、鬼は一体。ざばりと影から身体を出した鬼は空中にいる私を忌々しげに睨んでいる。
炭治郎が三で私が一ってバランス悪すぎない？ とどこか冷静な言葉を浮かべる頭の片隅の私はこの際放置して。
加勢をするにしてもこの鬼をどうにかしないと和巳さんが危ないかもしれない。

頭を後ろに振って勢いをつけ、そして前へと振り下ろしくるりと回る。更に頭が下に来た時に足を伸ばしてそのまま強く下に振って、落下に加速をつける。




“銀(しろがね)の呼吸 肆ノ型 氷柱(つらら)落とし”！！

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