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「ここで里子さんは消えたんだ……」
やって来たのは細い路地。本当になんてことない場所だった。
きょろりと辺りを見回しても、特になにか思い当たるものはない。けれど確かに、ここなら人通りが無いといっても過言ではないだろうし、狙われてもしょうがないかな、なんて思ってしまう。絶対口にはしないけど。
「信じて、もらえないかもしれないが……」
自信が無いように言う和巳さん。今まで誰にも信じてもらえなかったんだろうな。
まあ普通の人からしたら、人が突然消えた、なんて言い訳にしか聞こえないか。
けれど、私同様に辺りを見回していた炭治郎が、和巳さんの方に振り向いて言ったのだ。
「信じます! 信じますよ!! 信じる!」
真っ直ぐな瞳でそう言って。
がばり、としゃがんで地面の匂いを嗅ぐ炭治郎。さながら犬のようだななんて思ったけど、まあそれも言わないでおこう。
そう考えながら、どうしたのかと身体を動かした和巳さんを手で制して、笑いかけた。
「まあ、私達はその為に来たのでねっ」
信じない、なんて選択肢、無いです。
驚いたように僅かに目を見開いた和巳さん。一体今までどれだけの人に「ふざけるな」だとかのことを言われてきたのだろう。本当のことを言ってるだけなのにね。
匂いを嗅ぐ炭治郎に近づいてしゃがみこむ。
「どう?」
「微かに鬼の匂いが残ってるけど、
「斑……?」
要するに、辺りに点々としてるってことだろうか。ふむ、と地面を見ながら考える。
斑な匂い、痕跡。鼻が利く炭治郎が言うんだから間違いないだろうけど、地面を斑に、ってなんだ。
これが例えば足跡だとかの形が残るものならまだ分かるけど、匂いは形に残らない。足跡がつかないように跳びながら移動したとしても、匂いは筋になって残るだろう。本当なんなんだ。
考えても、今ある材料じゃ答えなんて出なくって。
匂いを追う炭治郎の後をついて行く。町の人からおかしなものを見るような目で見られたけどそんなの気にしていられないわけで。その間も私は悶々と考え事。
気づけば辺りは夕日の色に染まって、そろそろ太陽が沈もうとしていた。
あいつらが活動する時間。
「信じてほしい」
そんな中、そう呟いたのは他でもない和巳さんだった。
「本当に消えたんだ……」
「信じます」
「もちろん」
間髪入れずにそう言って、炭治郎がこう続ける。
「その為に俺達は、ここに来ましたから」
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さんいちが・改 - ユズヒさん» 返信遅れてすいません!なるなるほどほど楽しみですな!! (2020年6月12日 21時) (レス) id: d344c61285 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - さんいちがさん» コメントありがとうございます!そしていい所に気づいてくださいました!そうなんです、夢主は強い鬼には弱くなるんです。対人だと一部除いて強いんですけどね。何で弱くなるかというのはこの先を読んでいただければ分かるようになっているので、お時間あればぜひ! (2020年5月3日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
さんいちが - あの、ちょっと気になる(?)んですが。夢主強いのに炭治郎が苦戦したりする鬼には夢主弱くなってるような…夢主は冨岡さんに追いかけられたとき、冨岡さん追い付けないって言ってたり、結構強いと思うのに沼の鬼に苦戦してたし………あれ?私の理解力がだめ? (2020年5月3日 22時) (レス) id: d344c61285 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» 宇髄さんは!!アウト!!ですね!! 色男全般はアウトです (2019年8月4日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 美丈夫恐怖症……損だなぁ。伊之助の顔はどうなんだろう?宇髄さんはアウトだよなぁ…… (2019年8月4日 22時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月26日 1時