＊ ページ40
「君は、確か……」
「同じく生き残り。ほら、君らの喧嘩？ みたいなの止めたでしょ？ 覚えてない？」
「いや、覚えているんだけど……そうじゃなくて……」
「うん？」
「君、初日に俺の近くにいなかったか？」
どくり、と心臓が跳ねた。
バレた。なんで？ やっぱりあの時姿を見られてた？
どくどくと心臓が痛いくらいに脈を打つ。じわりと汗が滲んで、血の気が引く音がした。
「あ、違っ、悪い、責めるつもりじゃなかったんだ！ その、匂いが、印象的だったから……」
「匂い……？」
……そういえば初日に女の鬼から臭いって言われたな。え、それ？ それなの？ 無理死ぬ恥ずかしい死にたい殺してほしい。
「ああ。藤の花の匂い。今の君の匂いが、あの時もしてた」
「え……待って、藤の花？ え、え？」
待ってどういうこと……え……。
ちょっと意味が分からなくてぽかんとしてしまう。藤の、花……それってもしかして、小屋の周りに咲いてる藤のこと？ え、それの匂い？
……待て、確か藤の花の香も焚いてたなそういえば。私が神様のとこに行って六年だから、その間藤の匂いに囲まれてたってことで、要するに……匂いが染み付いた？
だからあの時、鬼は私のことを臭いと言った？ 鬼にとって藤の花の匂いは弱点の一つでもある。……なるほど？
「そんなに強い匂いじゃない。ちょっと香る程度だ」
「え、その匂いを嗅ぎとれるの？ なに、犬なの？」
素でそう聞いてしまった。なかなかに失礼な気はしてる。
でも待って、それってすごくないか？ だって匂いで嗅ぎとれるって、善逸とは違うタイプのサーチ能力だよね？ なんじゃそりゃすごすぎでは？
「はは……。俺は人より鼻が利くんだ。だから分かった」
「へえ……」
疲れた顔で笑う彼に曖昧な返事をしてしまった。疲れているだろうに、それでもしっかりと話してくれる。どれだけ優しいのかこの少年は。
「……あの」
「ん？」
喉が張り付く感覚。言葉がつっかえて、音にすらならない気がした。また汗が滲む。たった一言言うだけなのに、心臓が口から飛び出そうだった。
ゆっくり歩きながら、彼は私の言葉を待ってくれている。
ああ、優しいなぁ。待ってくれてるのなら、ちゃんと言わなきゃいけない。やっぱりなんでもない、の言葉で逃げちゃいけない。
「…………ごめ、ん」
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ひめ(プロフ) - 手鬼遭遇時の夢主の心中がまさに『平和な日本で生きた転生者』の葛藤でとても惹き込まれました。まあ実際鬼滅世界に放り込まれたらこうなりますわな…って思いが強いです。面白い！！ (2022年11月18日 17時) (
レス) @page50 id: 46aa1d2279 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ルーナさん» コメントありがとうございます！私なりに調べてみたのですが、“一息で言う”という意味で“ノンブレス”と使う方が多く、夢主もそっち側かなぁと思いこちらの単語を使いました。今の所変更する予定はないのですが、読みづらくなっていたのなら申し訳ありません。 (2020年3月28日 2時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ - �爛離鵐屮譽広瓩茲蝓↓爛屮譽好譽広瓩諒�が馴染みがあるます。 (2020年3月27日 23時) (レス) id: f3f2e83d09 (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ - �爛離鵐屮譽広瓩茲蝓↓爛屮譴轡譽広瓩諒�が馴染みがあるます。 (2020年3月27日 23時) (レス) id: f3f2e83d09 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ルイリカさん» あ！！？？本当ですね！！？ ご指摘ありがとうございます！ 修正致しました！！ (2020年3月18日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユズヒ
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作成日時：2019年7月17日 0時
