第11話 めでたくない話 ページ2
「神様ァアアアアア！！！！」
スパァアン！ と。それはもう勢いよく小屋の引き戸を開け大声で叫んだ。
きょとんとした神様と視線がかち合うが、はあはあと肩で息をする私はどころではない。
あれから。なんとか社の近くで一戦交え、あの人を社目掛けて蹴り飛ばし戦線離脱。今日は月一のお供えの日だったから、上手くいけば村人とはち会って隙ができるだろうと踏んだのだ。
結果は見事大成功。あの人が村人に気を取られている隙に私は一目散に逃げ出して、今に至る。
「……なんじゃ、そんな慌てて」
「きさ、きさつ、鬼殺隊の人がいたんだけど！！」
「鬼狩りが？」
ああなるほど、と神様がぽんと手を打った。外は雨が降り出して、地面と屋根を雨粒が叩く音が鼓膜を震わせる。
とりあえず中に入れ、と神様に促され、戸を閉めた。草履を脱いで畳に上がろうとしたら、濡れたまま来ようとするな馬鹿者と手拭いを放り投げられた。
うわぁ、着物がだいぶびしょ濡れだ。以前子どもに会った時に着てたものと一緒のやつだけど、気に入ってるのに……。
「それでお主、山ん中駆けずり回っとったんじゃな？ それはそれは……疲れたじゃろ？」
「めっっっちゃ疲れたわ！！」
足がちょっと震えるくらいには疲れたよ！！
神様は一応この山を住処……住居……？ あ、神域？ 陣地？ それでいいや。陣地にしているだけあって、山の音は全て聞こえるらしい。
中には陣地の中全て視える者もおるが、儂は音だけが聞こえるのぅ、と聞いたのは随分前のことだ。
だから本当は、神様を呼ぼうと思った。だってそうした方が話が早いだろうし、あの人なんか私のこと神だか鬼だかと勘違いしてたし。私は人です。
でもやめた。もし私が神様を呼んだとして、だ。まずあの人が無傷じゃ済まないだろう。
なんなら手応えのある相手として斬り合いでもしかねない。下手に息吹でも使われた日には、きっとあの人は死んでしまう。そう考えて呼ぶことはできなかった。
小屋に戻らなかった理由はそれもあるが、それとは別に私が自分の住んでいるところを知られるのが嫌だったというのもある。
だって、ねえ？ 知らない人に自分の住居知られるの嫌じゃない？ 怖くない？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1030人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめ(プロフ) - 手鬼遭遇時の夢主の心中がまさに『平和な日本で生きた転生者』の葛藤でとても惹き込まれました。まあ実際鬼滅世界に放り込まれたらこうなりますわな…って思いが強いです。面白い！！ (2022年11月18日 17時) (
レス) @page50 id: 46aa1d2279 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ルーナさん» コメントありがとうございます！私なりに調べてみたのですが、“一息で言う”という意味で“ノンブレス”と使う方が多く、夢主もそっち側かなぁと思いこちらの単語を使いました。今の所変更する予定はないのですが、読みづらくなっていたのなら申し訳ありません。 (2020年3月28日 2時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ - �爛離鵐屮譽広瓩茲蝓↓爛屮譽好譽広瓩諒�が馴染みがあるます。 (2020年3月27日 23時) (レス) id: f3f2e83d09 (このIDを非表示/違反報告)
ルーナ - �爛離鵐屮譽広瓩茲蝓↓爛屮譴轡譽広瓩諒�が馴染みがあるます。 (2020年3月27日 23時) (レス) id: f3f2e83d09 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - ルイリカさん» あ！！？？本当ですね！！？ ご指摘ありがとうございます！ 修正致しました！！ (2020年3月18日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユズヒ
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年7月17日 0時
