* ページ49
「お前は何だ。鬼か? ……神、などとふざけたことを言うつもりはないだろうな」
その問いにすら返事はない。ただこちらをじっと見つめているだけだ。途端、ひゅ、と。
そいつは間合いを詰めて俺の目の前で刀を構えた。
「っ!」
ギィイン! 響く金属音と、次いでカチカチと刀同士が押し合い震える音。低い体勢から斬り込んできたそいつは、俺を見上げながら更に刀に力を加える。
「っ、!」
それを弾き、こちらも斬り込んだ。
キイン、キィン! と打ち合いが続く。どう斬り込んでも防がれいなされ躱されきりがない。水の呼吸を使おうと息を吸い込んだ時、そいつはまたぐんと間合いを詰め、今度は俺の脇腹を強く蹴り飛ばした。
「がはっ……!」
吹っ飛ばされ着地に失敗した体が地面に擦り付けられる。
っ、くそ! 追撃を許さないよう素早く起き上がり刀を構え、踏み込もうと足に力を込めた。
……しかしそれは、意外な声によって遮られてしまう。
「わあ、お兄ちゃん今どこから出てきたの? 見ておとうさん! さっき話してたお兄ちゃん!」
声のした方を向くと、そこには先ほどの子どもが驚いた表情で俺を見つめていた。その後ろには数人の男女。手には野菜や酒。
なんだ、と辺りを見れば、目に入ったのは古ぼけた一つの社。わりと大きなそれの前で、村人達が慌てたように俺を見つめている。
「神様には会えた? 今日はお供えの日だから、もしかしたら会えるかもっておもったんだけど……」
「あんた、あんたぁ! 注連縄の先に、神様の場所に入っちまったのかい!? ああこりゃいけねぇ、きっと神様はお怒りだぁ……!」
神様、とは、さっきのあいつのことだろうか。ハッとして自分が吹っ飛ばされた方を見るが、すでにあいつは姿を消していた。あれが、神? あんなふざけた面をして逃げ回っていたのが、神だと?
────ごめんね。
蹴り飛ばす直前。律儀にも一言謝ってきたあれは、神ではなくまごう事なき人間だろう。
その言葉は音にならないまま。村人達の焦りの声も、俺の耳にはろくに入ってこなかった。
1354人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» もうそんなに経つんですねぇ……。長いようで短い一年でした。いつもありがとうございます!映画公開、円盤発売後からも再開するので、またよろしくお願いします!! (2020年7月11日 9時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 気づけばもう神様の巫女は一周年ですね。本編の区切りもついたのもタイミングバッチリですね!今までもこれからも、この作品が大好きです!応援してます (2020年7月11日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» いえいえとんでもないです!ご指摘頂けたおかげで描写抜けの事にも気付けたので、私としてはありがたい限りです! わー!ありがとうございます!!迷惑なんてことないですよ!これからもよろしくお願いします! (2020年4月29日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - ユズヒさん» そうだったのですね……!私の理解が足らず、申し訳ないです。。文章の書き方が凄く好きなので、作者様の事を推して行きたいと思ってます…!ご迷惑でなければ、仲良くして下さると嬉しいです……! (2020年4月29日 2時) (レス) id: 58d60c86cb (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» なので、文字にしてある構えは抜刀をする際のものではなく、“抜刀をした後の構え”の描写となっております。もし、「いやいやそれでもやっぱりおかしいな…?」となったら遠慮なく仰ってください!ご指摘ありがとうございました! (2020年4月28日 20時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月11日 20時