＊ ページ38
村の人達に情があるか、と聞かれると、答えは否だ。
私を育ててくれたのは感謝しているが、それだけ。「育ててくれた」と「愛情を注いでくれた」はまったくの別問題だろう。前者はあったが後者はなかった。一番身近だった爺さんでさえ、私に愛情を向けたことは一切無かった。
あの人にとって私は、本当にただの生贄だったのだ。
育ててくれたのだから情はあって然るべきだ、なんて言葉を言われようものなら、「そんなお綺麗にできてないから無理」とバッサリ切り捨てられる程には、あの人達に情は無い。
前世で愛情というものをちゃんと注がれ、それを知っていたからこそ、というのもこの結論に至った要素の一つだろう。
実際、記憶が戻ってから前世と村にいた時とを比べるとそれはもう大層な扱いの差がある。
前世で私に愛情を注いでくれた人達は、少なくともあんな冷たい目は向けてこなかった。
現に、私はそんなに優しい人間では無いのだ。私が守りたいものとはつまり、私を好きでいてくれて、私も好きでいられる人達。人間なんて結局のところそんなものだろう。
神様と一緒に山付近に出る鬼を狩るのは、それも稽古の一環だから。あと神様に逆らうのがちょっと無理だから。
それ以外に理由はない。
「嘘つけよ〜。お主ってば、それだけじゃないじゃろ〜？」
「うるっさいな……」
げんなりとした顔で、稽古相手の神様を見た。真剣を使っての手合わせにも慣れてきたものだ。会話をしながらできるようになったのはいつからだったかな。
今日は晴天だった。晴天の日は稽古や買い物、曇りや雨の日は一日中見回り。
鬼は陽の光に弱く、だからこそ夜に活動をする。
要するに、陽の光さえなければ昼でも活動はできるということで。体質が引き篭もりニートのそれだなという言葉はなんとか飲み込んだ。
昨日は曇りだったから一日中見回りだった。鬼を何体斬ったか分かりゃしない。今のところ雑魚とちょっと強い奴しか相手にしてないから、鬼の強さの上限が分からないのが悩みだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» もうそんなに経つんですねぇ……。長いようで短い一年でした。いつもありがとうございます！映画公開、円盤発売後からも再開するので、またよろしくお願いします！！ (2020年7月11日 9時) (
レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 気づけばもう神様の巫女は一周年ですね。本編の区切りもついたのもタイミングバッチリですね！今までもこれからも、この作品が大好きです！応援してます (2020年7月11日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» いえいえとんでもないです！ご指摘頂けたおかげで描写抜けの事にも気付けたので、私としてはありがたい限りです！ わー！ありがとうございます！！迷惑なんてことないですよ！これからもよろしくお願いします！ (2020年4月29日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - ユズヒさん» そうだったのですね……！私の理解が足らず、申し訳ないです。。文章の書き方が凄く好きなので、作者様の事を推して行きたいと思ってます…！ご迷惑でなければ、仲良くして下さると嬉しいです……！ (2020年4月29日 2時) (レス) id: 58d60c86cb (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» なので、文字にしてある構えは抜刀をする際のものではなく、“抜刀をした後の構え”の描写となっております。もし、「いやいやそれでもやっぱりおかしいな…？」となったら遠慮なく仰ってください！ご指摘ありがとうございました！ (2020年4月28日 20時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユズヒ
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年7月11日 20時
