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人、だった。なんてことない、服を着た人。
待って、意味が分からない。人だ。こんな夜中に、こんな山奥に、人。しかもここはまだ人が入っちゃ行けない場所、注連縄の向こう側。
どういうこと……?
「よいか娘。あれが、鬼じゃ」
「は……あれが!?」
驚いて木々の間にいるその人と神様を交互に見てしまう。だって鬼って、鬼ってもっと妖怪っぽくて、なんか、なんだ……ともかくこんな人っぽいものじゃなくない!? いや知らんけど!!
わたわたと慌てると、神様は何やら不思議そうに私に視線をくれた。
「……お主さ、あれ、何に見えとる?」
「何って……人。服着た人がいる。見た目からして男かな。私が知ってる鬼とはだいぶ違う」
「そうかそうか、人の子の
「……? 何言ってんの? 見えるでしょ?」
「それなんじゃがなぁ」
ははは、と神様は笑って、そうして一言、告げた。
「儂、あれ見えんのじゃよ」
「…………は?」
え、なに? なんて? 見え、見えない? どういうこと? んんんん?
「儂にはな、あれが靄のように見えとる。確かに人の形をしとるがな、どうにも輪郭がぼやけとるんじゃよ。靄が人の子をを象った、と言った感じでな」
「……どういうこと?」
「さあなぁ。人の子はちゃんと見えるんじゃよ? でもな、あやつら鬼だけはどうしても靄に見えるんじゃ。そうかそうか、そのまま人の子の
……よく、意味が分からないが要するに、だ。
幽霊が見える人と見えない人、みたいなものだろうか。例えるならきっとこれが近いと思う。私もよく意味が分からないが、多分。
ざり、と男が近寄ってくる。その目と顔を見て、私は「ぇ」と小さな声を零した。
「どうかしたかの」
「人、だけど……人じゃない……なんか、え、なにあれ……。おかしいよあれ、だって、さ。目、とか頭、とか……なにあれ」
血管が浮き出た額や顔、黒目はまるで猫のように細長くてギラギラして、口からは牙が光っている。
鬼、と言われれば確かに、あれは鬼だと言えると思う。人の形をした鬼……というより、人に乗り移った鬼?
上記を全部神様に言えば、「ほぅ……」と興味深げな声を漏らした。
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ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» もうそんなに経つんですねぇ……。長いようで短い一年でした。いつもありがとうございます!映画公開、円盤発売後からも再開するので、またよろしくお願いします!! (2020年7月11日 9時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 気づけばもう神様の巫女は一周年ですね。本編の区切りもついたのもタイミングバッチリですね!今までもこれからも、この作品が大好きです!応援してます (2020年7月11日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» いえいえとんでもないです!ご指摘頂けたおかげで描写抜けの事にも気付けたので、私としてはありがたい限りです! わー!ありがとうございます!!迷惑なんてことないですよ!これからもよろしくお願いします! (2020年4月29日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - ユズヒさん» そうだったのですね……!私の理解が足らず、申し訳ないです。。文章の書き方が凄く好きなので、作者様の事を推して行きたいと思ってます…!ご迷惑でなければ、仲良くして下さると嬉しいです……! (2020年4月29日 2時) (レス) id: 58d60c86cb (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» なので、文字にしてある構えは抜刀をする際のものではなく、“抜刀をした後の構え”の描写となっております。もし、「いやいやそれでもやっぱりおかしいな…?」となったら遠慮なく仰ってください!ご指摘ありがとうございました! (2020年4月28日 20時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月11日 20時