【鬼滅の刃】神様の巫女 拾壱

第100話 情報過多注意報 ページ34

「……で、言わんかった、と」

「言えるわけないじゃんこのバーーーーーカ！！！」


場所は神代山、神様の家。所謂実家、ってやつである。
胡座に頬杖をつく神様を前に、私は床に四つん這いになりダンダンと拳を振り下ろしていた。もちろん床に。


「だって、だって！ 言おうと思ったけど！ いくら善逸でも！ さすがにこれは受け止めきれないと思って！ ちょっとでも嫌な顔されたり“なんだコイツ”みたいな顔されたら立ち直れないじゃん！！ 誰がって私が！！」


口にしているのは数ヶ月前の出来事。無限列車の一件が終わって、療養中のある夜の事。
例に漏れず、私の傷は三人よりも早くに完治。機能回復訓練を早々に終えて任務に復帰し、幾つか任務をこなして、気づけば木々が秋の装いに彩られてきた今日この頃。
今回の任務は先輩とだったので案外早く片付いた。だから報告を兼ねて神代山に戻ってきた、というわけで。……というか、なんとなく先輩との任務が多い様な。復帰してから何度か先輩と組んでるし……うーん、気のせい？


「普通そんなこと言われて受け止められる奴いる！？ “私実は前世の記憶があって、この前の鬼はその時の兄なんだよね”とか言われて、“そうなんだ”って受け止められる！？ 私は無理！！ そんな事言われたら間髪入れずに“なんだこいつ気持ち悪”って思っちゃう！！ 頭イカれてんのかな関わらないようにしよって思っちゃゔ！！！！」

「うるっさいのーお主」


うわああああ！ と嘆きながら床をダンダンと叩く。だってあの時の善逸の顔が頭から離れない。“ごめんね。言えない。心配してくれてありがとう。言えなくてごめんね。本当にごめん”って私が言った時の、あの少しくしゃっとした顔が忘れられない。ちょっと悲しそうで、悔しそうで、“自分はそれが言える程頼られてはいないんだな”って悟った様なあの視線が、頭から消えない。

“そっか、わかった。じゃあ吐き出したくて仕方なくなった時は、その時は聞いてやるから”って笑って言ってくれたけど、あの笑顔だって言葉だって善逸の優しさで、私が気にしない様にと気遣ってくれた装いで、本心である視線が少し悲しそうだった。目は口ほどに物を言う、とはよく言ったものだと思う。

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