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「……別に、そんなことないけどさ」
「今の間があった時点でそんなことないわけないじゃん」
「っだあーー! いいんだよ俺のことは!!」
突然叫ばれてびっくりした。きょとんとしていると、善逸がこっちに視線を寄越してきて、私は瞬きを一つ。
「……なんかあったのか?」
「え」
聞かれた言葉に驚いて固まった。
「この前の、無限列車の後からお前、なんか様子が変だからさ。何かあったのかなって」
「え、と……」
どくどくと心臓がうるさい。きっとこれは善逸にも聞かれてる。どうする。どうしよう。正直に話す? できるわけない。兄さんが鬼になってたって? 前世での兄さんが今世では鬼になってて、私を鬼にしようとしてるって? 言えるわけない。そんなこと、信じてもらえるわけない。
「なん、でもなくて。本当に! 大したことじゃなくってさ! 勝手に私がうじうじしてるだけって言うか、そんな感じだから。でも心配かけちゃったんだよね。ごめんね。大丈夫だから、気にしないで」
「A」
びくりと肩を跳ねさせて、逸らしていた視線が自然と声の方に向く。蜂蜜を蕩したような綺麗な瞳。真っ直ぐとこっちを見る善逸はそれから何も言わないけれど、その視線が教えてくれる。
──“一人で抱え込むな”、って。
「ぜん、いつ」
「言いたくないなら無理にとは言わないけどさ。でもお前、一人で抱え込んでも上手く処理できないだろ。実際前にも同じことあって、処理できてなかったし」
まあ今回の方が重症そうだけど。そう付け足して、善逸は自分の膝に頬杖をついた。
バレてる、なんて心の隅で思いはしたけど、苦笑いとかで表に出すことはできなかった。
どうしよう。言ってしまおうか。自分の境遇も、兄さんの事も。受け止めてくれるだろうか。目の前の彼は、拒絶も嫌悪もせず、受け止めてくれるのだろうか。
「……A」
優しく響く音で名前を呼ばれる。ぐ、と喉が詰まる感覚。耐えていたものが崩れそうな気がした。
私は、私は。
「そ、の……」
私、は。
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ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» たくさんコメントありがとうございます!!嬉しい!!やっとこさ本格的に遊郭編に入りました!宇髄さんと絡ませるの楽しいので、もっと沢山絡ませたい欲が…ぐへへ…。いつもありがとうございます!励みになりますー!! (2022年11月7日 22時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - もう何回のコメントしてすいません!だけど!私の脳がテンションを抑えきれなくてッ!アァァァッッ本格的に遊郭編突入!楽しみでしかない…✨✨文章がっ、溢れ出るこの文才…✨主ちゃんが可愛すぎます…宇隨さんとの絡み最高です!更新頑張ってください! (2022年11月7日 22時) (レス) @page48 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!!やっと宇髄さん出せました!!これから遊郭編頑張っていきますー!!いいですよね宇髄さん。これからたくさん夢主に絡ませるぞ!嬉しいお言葉を文字数いっぱい…いつもありがとうございます…!これからも宜しくお願いしますー!! (2022年10月26日 2時) (レス) @page42 id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - 久しぶりの更新有難う御座いますッッッ寝る前に読もうとしたらテンション爆上がりなりました!!!⤴主ちゃん遊郭編楽しみだなー!やっぱ宇髄さんのキャラいいわぁ…好きィ(^^ω)毎回話の内容の尊さに悶え 、文才の差を噛み締めております。続き楽しみです!…字数ゥッ (2022年10月26日 0時) (レス) @page42 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉の数々、ベッドの上で転げ回りながら感受致しました!本当にありがとうございます…!マイペースなノロノロ更新ですが、末永くお付き合い頂ければ幸いです〜!! (2022年9月27日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月20日 0時