第97話 残された者 ページ24
鼻腔を擽る焦げ臭い匂い。
鼓膜を揺らす何かが焼ける音。
それから──身体を包む、暖かな光。
この光は知っている。この暖かな光は、何度も浴びてきた。
これは陽光。太陽の光。夜が、明けた合図。
「っ!!」
兄さんの顔が驚愕に染まり、私の方に伸ばしていた指が燃えて炭クズのようになっていく。兄さんは一瞬でその場から退き、日の光が当たらない森の影へと着地した。
よく見れば顔も少し焦げていて、それが瞬時に治っていって。そんな中で、兄さんは私を見ながらぐちゃぐちゃに顔を歪ませていた。
「ぁ、はは、何これ、なんだよこれ。もうちょっとだったのに、タイミング良すぎでしょ。なに、もしかしてこれも運命とか言うつもり? 俺達が離れ離れになるのが望まれてるって? はは、あはははは。なん、だよ、それ」
口元は笑っているものの、零れるのは何とも乾いた笑い。笑っているのに目は身開いたまま、真っ直ぐ私を見つめている。森の影に入ったからかもしれないけど、私と同じ色の瞳には光が宿っていないように見えた。
「〜〜〜っ、くっそぉおおお!! ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなあ゙ぁあ゙あ゙あ゙!!!」
地面に向かって吠えたにも関わらず耳を劈く絶叫。兄さんがその場で地面を何度も何度も踏みつける度に、重たい音が響く。地団駄、とか可愛いものじゃない。本当に地面を割ろうとしているかのような、感情の爆発。現に兄さんが踏みつけた地面はひび割れているし、辺りは微かに揺れている。指一本動かせず、視線を移動させるだけで精一杯の私はその揺れと音を、朝日を浴びながら受け止めるしか無かった。
やがて落ち着いたのか、地面を踏みつけることをやめた兄さんはそれでも肩を激しく上下させながら下に向けたままの顔をゆっくりと持ち上げて私の方を見た。こてりと倒した首に倣って、髪の毛が揺れて顔にかかる。その奥でうっそりと笑った兄さんは、唇を動かして何か言っていたけれど聞き取ることはできなかった。
ただ一言。ごめんね、と言っていたことだけは、はっきりとわかった。
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ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» たくさんコメントありがとうございます!!嬉しい!!やっとこさ本格的に遊郭編に入りました!宇髄さんと絡ませるの楽しいので、もっと沢山絡ませたい欲が…ぐへへ…。いつもありがとうございます!励みになりますー!! (2022年11月7日 22時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - もう何回のコメントしてすいません!だけど!私の脳がテンションを抑えきれなくてッ!アァァァッッ本格的に遊郭編突入!楽しみでしかない…✨✨文章がっ、溢れ出るこの文才…✨主ちゃんが可愛すぎます…宇隨さんとの絡み最高です!更新頑張ってください! (2022年11月7日 22時) (レス) @page48 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!!やっと宇髄さん出せました!!これから遊郭編頑張っていきますー!!いいですよね宇髄さん。これからたくさん夢主に絡ませるぞ!嬉しいお言葉を文字数いっぱい…いつもありがとうございます…!これからも宜しくお願いしますー!! (2022年10月26日 2時) (レス) @page42 id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - 久しぶりの更新有難う御座いますッッッ寝る前に読もうとしたらテンション爆上がりなりました!!!⤴主ちゃん遊郭編楽しみだなー!やっぱ宇髄さんのキャラいいわぁ…好きィ(^^ω)毎回話の内容の尊さに悶え 、文才の差を噛み締めております。続き楽しみです!…字数ゥッ (2022年10月26日 0時) (レス) @page42 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉の数々、ベッドの上で転げ回りながら感受致しました!本当にありがとうございます…!マイペースなノロノロ更新ですが、末永くお付き合い頂ければ幸いです〜!! (2022年9月27日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月20日 0時