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黒を映さない黒 ページ20

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場所を変えて喫茶店。
前回来た所とは違う。悟の猛抗議によりあの不味い珈琲を啜ることは無かった。

店内は珈琲の匂いが染み付いている。間接照明が採用されていて優しい暗さがあった。


注がれた珈琲を手に取った。アンティーク調の椅子がぎしりと音を立てる。床は冷たいコンクリート剥き出しだ。


「学校の人に聞いたんだけどいい人だと言っていたよ、君のこと」
猫でも被っているのかい?


一口啜った。ブレンドなのか特有の酸味があると感じる。うん、美味しい。私のために入れられた珈琲。インスタントのみんなの為に作られたものとはやはり少し違うように感じられた。


Aは目を(しばたた)かせた。黒が消えたり、現れたり。その黒を恐ろしいと思うのは、(おぞ)ましいほど美しいからなのかもしれない。瞼で隠されるから尚更。



「猫を被る理由が分からないな。私はいつだって私だ。偽ることなどしないよ」


砂糖入れずにミルクを入れた。マーブルが美しい。名残惜しそうにスプーンで茶色を作る。

Aの首がゴクリと喉が動く。
片手で締められそうだなとぼんやり思う。自分の中の残虐性に驚きながらもどうせする訳ではないとそっと蓋をする。



「そもそも人間に良いも悪いもあるのかという話だよ。自分にメリットがある人間がいい人でそれ以外が悪い人?」
面白いな。


はは、と空笑いをする。また指でリズムを取っている。それは飛ぶ前のステップに酷く似ていて、なんだか胸にすとんと落ちた。


「もし、人のために動ける人間を良い人間として、自分勝手に動く人間を悪い人間とするなら、私は悪い人間だし五条君だってそうだろう」


昔懐かしの綺麗な緑色のメロンソーダに熱中していた悟が顔を上げる。アイスも頼んでいた。アイスクリームディッシャーで丸くされている。


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夏炉(プロフ) - 最後までお付き合い頂きありがとうございました!!私も全力で私好みの作品を作ろうと力を尽くしたのでそう言っていただけると書いてよかったという気持ちになります。閲覧頂きありがとうございました!! (2020年12月30日 17時) (レス) id: 2b945b799d (このIDを非表示/違反報告)
希乃夏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まで楽しませていただきました!!終わり方も私の性癖にぶっ刺さりました!!素晴らしい作品を誠にありがとうございます!! (2020年12月30日 14時) (レス) id: 1e5270c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
夏炉(プロフ) - お空の蒼い月さん» 閲覧頂きありがとうございます!!対比は私が好きにかけた所なのでそう言って貰えるととても嬉しいです!!もう少しだけ続きますのでぜひお付き合い下さい!! (2020年12月30日 1時) (レス) id: 2b945b799d (このIDを非表示/違反報告)
お空の蒼い月(プロフ) - とても面白かったです…!表現の仕方や移り変わりや対比がすべて美しくて…もうこの作品を読んだあとだと、私の少ない語彙力で素晴らしさを表現できません。素敵な作品をありがとうございます。 (2020年12月30日 0時) (レス) id: 94a6e4722e (このIDを非表示/違反報告)
夏炉(プロフ) - 希乃夏さん» コメントありがとうございます!!お褒め頂いて大変嬉しいです!!更新頑張りますのでよろしくお願いします!! (2020年12月20日 19時) (レス) id: 2b945b799d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏炉 | 作成日時:2020年12月15日 20時

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