Qes,28_解けない答 ページ29
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騒ぎを聞き付けて太宰と中原がやって来た時、赤黒い何かが霞を押さえ付けているのと、その前に莉汰が立ちはだかっているのが見えた。
「ねえ、これ何の騒ぎ?」
「太宰幹部……! その、あの男が急に入ってきて、百目鬼さんが対処に当たったのですが……」
「色々あってあの状況ね。分かった」
肩を上下させながら息を切らしている莉汰。
息の漏れる口には鋭い牙が見え隠れしていた。
「急な訪問、ごめんなさい」
『……帰って。今直ぐに』
突き放す様な冷たいA。
莉汰はその言葉に苦しそうに顔を歪め、手を伸ばすが____
「っ……お、御姉さ____」
「莉汰」
「千足、御兄様……」
「霞を連れて戻れ。親父に巫山戯んなって伝えろ」
「は、い……確と、その様に」
パキパキと音を立てて赤黒い何かが霞から剥がれ、莉汰は霞の手を引いて来た道を引き返したが、最後に少しだけA達を一瞥して出ていった。
「……如何して」
少し離れた場所に車を停めさせていたらしく、霞を押し込んだ莉汰は車を出すように云った。
「何で来た」
「え? ……御兄様達に争って欲しくないから、かな」
「……くそっ」
「御兄様……如何してボク達は争うの」
「知るかそんなもの。親父の考えが誰に解る」
「それは……」
それは、解らない。
自分の父親が何を考えているのか、解らない。
何故、彼女達と対立しなければならないのかも。
一方、Aは目を押さえて蹲っていた。
何があったのか判らない太宰は彼女の背を擦り、如何いう状況なのか問い始めた。
「何処か痛いのかい?」
『目、が……』
「目? 一寸見せて」
『駄目です!』
「私が触れば平気だから」
太宰はそっとAの顔を包んで目を確認すると、少しだけ充血して、涙で瞳が潤んでいた。
太宰は彼女の手に握られていた目隠しを取ると、優しく目を覆い隠してそのまま抱き上げた。
『わっ……』
「あ、ごめん。驚いた?」
『少し』
「……各自持ち場に戻れ。千足さんは平気?」
「あ、うん。俺は平気」
その後、自室に運ばれたAは森の診察を受け、目元に濡れタオルを乗せられていた。
「原因は」
「恐らく短時間での乱発かと」
「四季嶌君。回復にどれぐらい掛かるかね?」
『このぐらいなら一時間もあれば』
反撃に移る為の策が練られ始める事になる。
管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時