あいつの兄です【ヒプマイ】 (ページ49)

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観音坂独歩の場合ページ49

『一緒に帰ろ独歩お兄ちゃん？』
そんな一生言われる事もなかったであろうセリフを
わざわざ同僚たちもいる会社のロビーで言うのは
昨晩急に女になった俺の兄
正直言って優越感が無いわけでもないが
周りからの視線が痛いのも事実
『…独歩お兄ちゃん？』
どうしようか決めかねていると兄貴は目に涙を溜め始める
確実に演技であることが俺にでも分かるのだが
やっぱり側から見れば俺が虐めてるように見えるだろう
そうなれば明日からは周りからクズ野郎という認識になるのは目に見えている
「…ごめんな待たせちゃって。お詫びにコンビニでなんか奢ってやる」
『えぇ！いいの!やったぁ！』
その嬉しそうな表情の裏に計画通りという言葉が見えた
…これは最初からこの言葉を待ってたパターンか
弟に奢らせようなんてなんて兄貴だよ…

『これ買って?』
「…え」
コンビニで兄貴が俺に渡してきたのは
栄養補助食品と栄養ドリンク
まさかのセレクトに驚く
『俺と一二三が作った夕飯を冷ましてまで食べるもんが
どんな味するんだろうって前から気になってたんだよなぁ』
怒るでもなく呆れるでもなくただ淡々と言われた
それが逆に怖いというかなんというか
ちなみに兄貴もそれなりに社畜みたいな感じだが
室長に強気で出て毎日定時に帰り仕事は持ち帰っているので
毎日夕飯は一二三と作って食べている
栄養補助食品にはお世話になったこともないそうだ

『…意外と美味しい』
「……」
その言葉にでさえ罪悪感を感じた