あいつの兄です【ヒプマイ】

観音坂独歩の場合 ページ37

『あのハゲ室長きっと俺の毛量が羨ましいんだよ』
点滴を右腕にぶっ刺されながら上司の文句を言ってるのは
観音坂家の長男のA
そうだ兄さんが入院することになったのも
俺ら兄弟が不運なのもきっと俺のせいなんだ…
『独歩、shut up』
「そ、ソーリー」
少し前まで海外にいたからか兄さんの口からたまに英語が出る
発音は高校の時の英語科の先生みたいに完璧で聞き取りやすい
それに対して俺はカタコト英語で…兄弟でこうも違うのかなんて
「…兄さん、これ母さんから」
『お、それ俺が好きなケーキ屋のクッキーじゃん！ありがと』
兄さんの病気は食事制限も特にない
病気というか不眠症に近いそれは
誰がどう見ても仕事のし過ぎ
兄さんもそれは分かっているようでお前はこうなる前に休めと言われた
その本人が仕事してるのは如何なものかと
その状況で仕事を任せる上司も上司だと思うが

『そうだ独歩、これお前の会社のやつだよな』
唐突に点滴を指差してそう言った
これは使用者本人の意見がもらえるという貴重な機会だと思い
とっさにポケットに入れてあった録音機を机に置く
それを見て少し笑った後兄さんは真剣な顔になり
商品のいいところと改善すべきところを告げる
職場で意見を言う機会も多いのか兄さんの言葉に無駄はない
俺も完全な仕事モードになる
『…とまぁこんなところかな』
「貴重なご意見ありがとうございます
このデータは企画部に提出いたしますが商品改善以外には利用致しません
これからも弊社の商品をよろしくお願いします」
『…完全に営業モードだなw』

兄との休日の過ごし方 碧棺左馬刻の場合→←山田三郎の場合

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