あいつの兄です【ヒプマイ】 (ページ36)

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山田三郎の場合ページ36

『死んだら…どこに行くんだろうな』
A兄が悲しい顔で僕にそういったのは
上の兄二人が用事で来れず
僕一人で見舞いに来た日のことで
その時の僕はA兄とポツポツと話しながら
売店で買った炭酸を飲み課題をしていた
毎日3人で見舞いに来ていて
いつもはニコニコしていて元気だったのに
思い出してみれば今日はあまり元気がないようだった
そうだとしてもなんで今日なのだろうか
「…僕には…わからないです…考えたくないです」
僕のその言葉に少し笑うA兄
『ごめん、辛いだろうけど三郎なら答えてくれるかなってさ
そう思っちゃったんだよね。お前は賢くて冷静だから』
普段はそんな笑い方をしないのにA兄は今にも泣きそうな
そんな笑顔でこちらを見ていて
それがまるでお別れを言われる前のように思えて
思わず飲んでいた炭酸を粗雑に机の上に置き
A兄の手をガッと握る
「まだお別れじゃないですよね？」
そもそもこの入院は風邪をこじらせただけで
「やりたいこともいっぱいあるのに…大丈夫だよね！」
まだ対戦したいゲームだってある
それなのに…もしものことを考えるとどんどん思考は落ちて行って
『ごめんねちょっと揶揄い過ぎちゃったな』
そう言ってA兄は僕をギュッと抱きしめる
それによって兄の心臓の音がよく聞こえて
『大丈夫。俺は死なない。そもそも明日退院だし』
そういう兄の顔は見えないが
声から笑っていてくれてることくらい分かった