あいつの兄です【ヒプマイ】 (ページ31)

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飴村乱数の場合ページ31

病院特有の消毒の匂い
怖いくらい静まり返っている空間
そこに響く点滴液の落ちる音
その全てが僕の心を容易く暗くする
『そんな暗い顔、乱数には似合わないよ？』
そう言って僕を笑わせようとする兄の腕には針が刺さっている
その事実でまた気持ちが落ちこみ気味
全ての始まりはあの日だったのかもしれない
その日は仕事が立て込んでいて自宅に帰って来れなかった
翌朝に帰るとリビングの電気がついていた
もしかして待ってくれてるのかとドアを開けると
「…え」
『あ～…バレちゃったな』
兄の前にあったには大量の薬
一瞬ODかとも思ったがどうやら違うらしい
まずその薬の量に驚きが来て
次に隠されていたことの悲しみがきて
最後に…気づけなかった自分への怒りが湧いた
…兄は何も話してくれなかった
それから数日後の今日
兄は入院することになった
そこで初めて兄の病名を知った
死亡率の高さで有名なものだった。

『ら～む。そんな顔すんなってば
お前は笑ってる顔が一番なんだから笑えってば
そんなんで俺が死んだあと大丈夫か？w』
そう兄が笑って言った冗談も今は心に刺さる
「兄さんが居なくなったらなんて…考えたくない
ずっと一緒にいてよ…そしたら僕も笑うからさ」
無理な願いであるとわかっていながらも願わずにいられない
このどうしようもないくらい愚かな僕を
この歪んだ二人の兄弟を救ってくれる神がいると信じて