兄が病気になった 山田一郎の場合 ページ29
鼻をつまみたくなる消毒の匂い
いつからか慣れてしまったこの匂い
扉の前で深呼吸してからノックをすれば兄貴の声が聞こえた
『ごめんなぁ毎日来て貰って』
余命宣告を受けたのは一月前
医者の言葉に驚く俺たちに対して兄貴は落ち着いていた
分かっていたなんて言う兄貴を殴りそうになったが
兄貴の目に光る涙を見てそんな考えは消えた
どんな辛くても、いつでも兄貴は泣かなかった。
そんな兄貴が涙を見せた事で初めて兄も人間なんだと思った事は忘れられない
泣いたのはその一回きりでそれからはいつも通り笑顔の兄貴がいる
「…なぁ兄貴」
『ん?どうした?』
「…兄貴は何かやりたいことはないのか?」
それでも俺は今その笑顔を壊そうとしている
この質問をすることはきっと間違えてるだろう
でも、それでも俺は兄貴に幸せに生きて欲しい
会えなくなる前に願いを叶えてあげたいそう思う
『やりたいこと…三郎の高校卒業が見たい…二郎の成人式が見たい…
お前がこのいかれてしまった世界を変えるとこを見てみたい
…なんで泣くんだよいちw…笑ってよ。そんなの無理だろって』
笑えるわけない。この涙は止められない
なんで兄貴なんだ。死んだ方がマシな奴らはたくさんいるのに
なのになんで…なんで…
『…まぁそれができるように精々足掻くよ
死神に呆れられるくらいこの命に縋り付いてやる』
そういう兄貴のは本当にいい笑顔で余計に涙が出てくる
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アスカ - 面白かった (2020年10月19日 16時) (レス) id: b5c5374a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楠木六花 | 作成日時:2018年12月29日 17時