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掃除用具を取ると始まる掃除。
結構な距離を染め上げたらしく、
もうこれは一種のデザインなんじゃねぇかなと思う。

俺は壁に水を掛けて色を落としながら、
然り気無く手伝ってくれているトントンさんを見る。

…それが当然だと言うように壁に染み付いた色を落としているあの人は、普段は書類整理で滅茶苦茶忙しいし、この騒動での非は完全に無い。

色々と大丈夫なのだろうか。



「___新兵君、何そんなじーっとトントンの事見てるん?」



そう考えているとすぐ横から呼び掛けられて、慌てて振り返る。
ソコに居たのはフードの下でニヤリと笑っているゾムさんで。
驚いた俺の顔を見て、悪戯が成功したかのように楽しそうに笑っては、
トントンの事気になるん?と首を傾げて来て。

…あざとい。

そう言いたいが相手は幹部なので喉の奥に押し込んで、
俺は視線をトントンさんに戻して頷く。



「トントンさんが手伝う理由が無いので」
「あー…、トントンは面倒見がええからなぁ」



苦笑しつつ言うゾムさんは、
彼奴忙しいのにな、と少し嬉しそうに笑う。

…そういえば、ゾムさんは一人が嫌いなんだっけか。

いつも皆……幹部の皆さんや、たまに自分直属の部下、
といった決まった人達といる気がするな。
今回みてぇに悪戯を仕掛けて構ってもらおうとするその姿に、
誰かがゾムさんの事を末っ子だと呼んでいた気がする。



「だからあんなに苦労人っぽいんですね」
「可哀想になぁ」



くつくつと笑うゾムさんに、心の内で、
貴方の所為もあると思いますよ、と呟く。

んじゃ新兵君、そろそろ戻るわ〜。と俺から離れていく後ろ姿に、
はーい。と返事をして手を動かす。

…名前で呼ばれないのは信用されていないからだろうな。
トントンさん狙ってるとか思われたのだろうか。
ちゃいますやん、俺は貴方達の味方ですやん。



「(…流石だな)」



周囲に感覚を研ぎ澄ませばわかる、隙の無さ。

俺に背を向け、何か言い争っているコネシマさんとシャオロンさんには、別に実体は俺を見てはいないけど、見られている気がする。
トントンさんは手堅く俺と一定の距離を保っているし、
ゾムさんは周囲をしっかりと警戒している。
だから俺の視線を疑った。


…新兵の中に観光客が混じっていないとは言えない。
その中で一人、荷物を簡単に纏め、早くこの城を彷徨いている俺は、
最も怪しいと言える。



「(幸先悪いな)」



でもまだ時間はある。ゆっくりやってけば良いんだ、俺よ。

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kenma(プロフ) - 好き過ぎる…いつまでも更新待ってます! (8月15日 12時) (レス) @page49 id: 23621c8f5e (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 大好きです!!また更新されることを願っています! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 85717083f6 (このIDを非表示/違反報告)
さすらいの村人B - くぅ.....続きが気になり申す、、、 (2021年12月20日 9時) (レス) @page49 id: 38e13adc7f (このIDを非表示/違反報告)
クルイ@SOS同盟 - あ、好きです...頑張って下さい! (2021年5月10日 22時) (レス) id: 6c77753d41 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠の芽-にゃお(プロフ) - なにこれ神ですか!?!?!?一気見してこの時間になってしまいました、、、、さいこうですぅうぅつう!!!!! (2021年2月3日 3時) (レス) id: b4d2a08102 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ショイ太郎 | 作成日時:2020年5月29日 8時

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