第二百九十六訓 ページ4
母は絶望の顔。
父は愉悦の表情。
『どういうこと、』
「A…ッ聞いちゃダメよ、何でもないから」
司欧「ははは、何でも無い事ないだろ」
父が、近寄ってくる。反射的に後ろに下がったが、歩幅の差は歴然。
司欧「暴れられると面倒臭いしなァ……しょうがない、気絶させて連れてくか」
『吉、原に?』
司欧「おっ、察しが良いなー、父さん嬉しいぞ」
笑顔のまま腕を振り上げる父。ギュッと目を瞑った私。殴られる。と、そう思った。
_____バシンッ、!!
『…?……!っお母さん!!!』
鈍い音がなったかと思うと、私の目の前には母が居て…父に叩かれていた。口が切れたのだろう、血が出ている。
「私はどうなろうと構いません……でもお願いです、この子には手を出さないで」
母が哀願すると、父はまあ良いやと流して家を出ていった。
そして、それからだ。
______母が病んだのは。
毎日毎日司欧さん司欧さんとうわ言の様に呟き、私を見ると急に泣いて謝る。
『お母さん、お父さんは?』
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさ、あああ、司欧さん…!」
『…………、…おかあさん』
その度私は母を抱き締めて大丈夫、大丈夫だよ、と慰めるのだ。
ねぇ、おかあさん。さびしいよ。おとうさんの事ばっか話さないで。私はどうなるの。
自分の寂しい感情に背を向けて、毎日毎日母の看病をした。時々、それで正気に戻った時もあった。
なのに、それでも口から出てきたのはまた「司欧さん」で。
「根は良い人なのよ」
「だって私だけを愛してくれると言ったもの」
「大丈夫、大丈夫…………」
日に日に崩れて、衰弱していく母。
自然と私は一人で家事が出来る様になっていた。
買い物に行き、料理をし、掃除をし、母の看病をする。それが一日の流れだった。
母が病み始めて…三ヶ月くらい経っただろうか。
その日も買い物に行き、母にただいまと元気よく伝えようとした。
だが、その言葉は私の口を通る事は無く。
______バサッ、と買い物袋が落ちた。
薄暗く、ベッドや机などの最小限の物しか無い部屋で…
母は、自 殺していた。
何とも……穏やかな笑顔で。
『______お母、さん?』
ねぇ、おかあさん。
________さびしいよ。
ー
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トめAと@とめぇーとぉーの精霊:カド松さん:(プロフ) - すごい・・・・・私比較的地雷が多いけれど全く地雷に触れてない・・・・・ここまでおもしろいと思ったのには初めてであいました・・・・・!オリキャラとかもよく殺意がわくけど有君とかぜんぜん腹立たないというかもっとやってくれって思うっていうかもう最高です! (2022年3月30日 6時) (レス) @page34 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - 阿呆代表の神さん» すみません、全部知らない……本当にごめんなさいアニメ知識不足で……!!代わりと言っては何ですが他のもののリクエストもっとください!本当にごめんなさい……!!! (2021年5月27日 17時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - もう銀魂が他の作品に侵食されつつあるの草。あの、もしまだやってなくて知ってるのなら、スケットダンス、ムヒョロジ、ボーボボ、ハガレン(これに至ってはもうジャンプじゃない)…この中でひとつでも良いので、知ってるものがあれば番外編でやって欲しいです…… (2021年5月26日 3時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - 雲隠れさん» ま、マジですか!?有難う御座います……!感動して頂けるなんて凄く嬉しいです!!これからも頑張ります!!! (2021年5月11日 7時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
雲隠れ - 泣きました。凄く感動しましたっっ! この小説最高過ぎます…。ヒロインかわいいし面白いし、とにかく最高なので何回も読み返させていただいています。これからも頑張ってください! (2021年5月10日 23時) (レス) id: 9c937fba5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:実珠 | 作成日時:2020年12月14日 23時