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楽しげな声で囁く頃には、青年は意識を無くしていて、皮膚を切り落とすと真っ二つに割れた頭蓋骨から脳が飛び出した。
「よし、取った。屁理屈を考える脳は美味しいらしいけど……理解に苦しむよ本当に」
青年を横目に取り出した脳をホルマリン漬けにして、新鮮な脳を好むベルの元へワープホールを使って直接送った。
その昔、カナン地域で崇められていたとされるバアル──の子孫であるベルは、他の神と関わらなかったせいか卑屈になってしまっている。バアルが己の子孫を見たらいったいどう思うのか。
容姿も特段悪い訳ではなく、むしろ良い方であるにも関わらず。どれだけの女死神が言い寄ってきても彼は独り身でいる為にと全て断っている。
何故なのか尋ねた時、大切な物が出来て死ぬのが怖くなるのを避けるため、と返ってきたが滅多に本音を語らない彼の性格上本当の所は分からない。
【めちゃ好み ありがと】
ワープホールから落ちてきた紙切れを見ると、余程嬉しかったのか、随分と汚い文字で感謝の言葉が書かれていた。
同時に、追加注文の声と一緒に付箋も落ちてきた。
「全ての臓器停止……? これじゃ脳死判定すらせずに失血死か何かで片付けられそうな気もするけど……?」
ベル程ではなくても乱雑に走り書きされている文字を見て呆れる。丁寧に停止させる為の作業が面倒くさく、そうする事も殆ど無意味だと分かっているはずなのに。
「逆らったりなんかしたらどうなるか分かんないしなぁ……。よし」
一息ついて、雑に胸から腹を切り裂いた。
流石人体と言ったところか、ナイフで切り裂こうにも皮膚が硬い。
臓器を守る為のあばら骨も、取り出すにはただの邪魔な骨でしかなく、少し考えた挙句折ることにした。
「全部切り刻んどこう」
心臓やら何やらと取り出してはみじん切りにして行くように切り刻む。
血液でヌルヌルしているが、いざ切ってみると柔らかい。断面からは血がこれでもかと吹き出している。
初めてという訳でもないが、臓器のリアル過ぎる感触にはいつまで経っても慣れない。
「ふぅ……。結構返り血浴びたな……着替えないと」
予備で持っていた黒いTシャツと黒いコート、黒いジーンズ……自分は怪しいですと言わんばかりの服ばかりだが、このご時世でまさか死神が飛んで回っているなど誰が信じるだろうか。
ワープホールを自分の部屋に通じさせ、血塗れの服を投げ入れた。
「さて……あと一件は行けそうだね」
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シャル@如月唯奈(プロフ) - ハジメマシテ!ULOGから来ました、シャルといいます。小説めちゃめちゃ面白かったです!文章の書き方とか世界観とかめちゃめちゃ好みで、ドンドン読んじゃいました(笑)これからも頑張ってください、応援してます! (2020年1月18日 22時) (レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天楽 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月25日 23時