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副司令に制止され、私は倒れているゲンドウを固唾を飲んで眺めていた。


やがて、ゆっくりとゲンドウが起き上がる。
私にはその動きがやけにスローモーションに見え、ゲンドウの一つ一つの動作が目に焼き付いた。

「…ユイ…椿…」

そう呟いたと同時に、ゲンドウが初めてこちらを振り向いた。



『っ、な…!』

私は父の顔を見て、思わず目を見開いた。
まるで見てはいけないものを見てしまったように息が詰まる。

ゲンドウの顔を思い出すときに一番最初に思い浮かぶのは、サングラス越しにある冷ややかな瞳。
何を考えているかわからないその瞳が、私は怖かった。


だが、今の彼にはその冷たい瞳は無くなっていた。
…無くなっていた、という言い方はおかしいかもしれないが本当に”無い”のだ。

そういえば、Qでゲンドウはその瞳を覆うようにバイザーを着けていた。
その下の瞳がどうなっているかなんて、考えたこともなかった。


「碇は自分の願いのためにあらゆる犠牲を払っている。自分の魂もな。」

副司令のその言葉は、かつて、いやいずれシンジに発する言葉。


――その目は、大きな傷を負ったように抉れていた。傷口から見える赤い光は、到底人間のそれではない。

何が起きている?
この人は、一体何になってしまった?


混乱する私が唯一理解できたのは、父は、碇ゲンドウはネブカドネザルの鍵を使用し人間ではない”なにか”になってしまったということだけだった。

 
人を見捨てでもその目的を達しようとする男は、自ら人を捨ててしまった。


私が一歩退くと、とんと何かにぶつかった。はっと振り返るとそこには冬月副司令が立っていた。


「君は、我々の計画に協力することになるだろう。…だが、今はその時ではない」

『なに、を』


「”然るべき時”が来るまで、君の記憶は封印させてもらおう」


次に目が覚めた時、私の目に映ったのはヴンダー内の無機質な天井だった。

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設定タグ:エヴァンゲリオン , トリップ , 新劇場版   
作品ジャンル:アニメ
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* ふぅ夜 *(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました。主人公の心情やカヲルくんとの絡みに内心ドキドキしていますが、これからどうなるのか楽しみにしています! (2023年3月14日 14時) (レス) id: 57777bfa3c (このIDを非表示/違反報告)
たったかたー。 - 好きです!!更新がんばってください!! (2022年2月11日 13時) (レス) @page22 id: 6472def61e (このIDを非表示/違反報告)
如月真(プロフ) - おわぁぁぁ!!面白いですぅぅぅ!! (2021年8月17日 22時) (レス) id: 57a41376e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年7月11日 18時

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