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NOside
ﾋﾟｰｯ!
先程Aが告げた通り、染岡からボールがAの元へ回ってくる。
弱小サッカー部の、それも女子生徒。完全に油断される条件がそろっている。
ボールを奪うため、寺門が強烈なスライディングをする。
どうやら女子であろうが、彼らは目的のために雷門イレブンを潰すつもりのようだ。
誰しもがボールを取られると思った。
だが、
『そんなんじゃ、私からもボールを取れないよ！』
「なにっ！」
彼女はひらりと寺門をかわし一人帝国陣営に突っ込んでいったのだった。
そこから数分は、Aの独壇場だった。
何か、凄いプレーをしているわけではない。
何か、必殺技を使い彼らを翻弄しているわけではない。
この一週間、彼女がしたのはせいぜいドリブル練習程度。
それ以外の時間は、帝国学園の過去の試合を何度も何度も見直した。
今まで彼女が彼らに憧れ、集めた情報を寝る間も惜しんで研究し続けた。
その結果、Aの頭には各選手の癖や動き、そして弱点が全てインプットされていた。
「A、いっけー！」
普段の力を出していれば、こんなにも簡単に帝国学園の弱点を突くことはできなかっただろう。
だが舐めた姿勢で挑んでいた彼らの虚をつくのは、いともたやすいことだった。
あっという間に帝国イレブンを抜き去り、残すはゴールキーパーのみ。
Aはシュート態勢に入り、即座に源田が守りに入る。
「させるか！」
『君は踏み込む方向が分かり易いんだよ！』
彼女の放ったノーマルシュートは、源田が飛んだ方向とは逆に飛んでいった。
ﾋﾟｰｯ!!
「……ご、ゴール！！な、なんと後半戦から入った長谷川！
華麗に帝国イレブンを翻弄し、シュートを決めた!
雷門、ついに一点を返したぁっ!!!」
そして、初めて帝国ゴールを揺らしたのだった。
・
「A、すげぇぜ！」
「あの帝国から一人で点を取っちまうなんて…」
「どうやったんですか、さっきの！」
『い、いやぁ…なんかムカついてたから無我夢中でやってたっていうか…』
…まあ、多分これからはこんな簡単に得点なんて取れないだろうけど。
・
「くそっ…すまん鬼道。油断した」
「いや。あの女確かに俺達の弱点を的確についてきた。
…まずは、あの女からだ」
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作者名：白 | 作成日時：2021年11月7日 20時
